「ハイルシュテッテン ~呪われた廃病院~」 感想  ドイツ製ホラーにしては中途半端だが良作

概要

原題:Heilstatten
製作:2018年ドイツ
発売:ブロードウェイ
監督:マイケル・デイビット・ペイト
出演:ゾンヤ・ゲルハルト/ティム・オリバー・シュルツ/リサ・マリエ・コロール/エミリオ・ザクラヤ/ティミー・トゥリンクス

第二次世界大戦時、結核患者を収容し安楽死を強要していたという悪名高いサナトリウム、ハイルシュテッテン。廃墟と化したその療養所へ、「ドッキリTV」なるユーチューバーのグループが24時間耐久肝試しにやってきた。カメラを設置し夜が訪れた時、邪悪な怨霊が蠢き始める。





感想


ドイツ製ホラー = トラウマ製造機

という図式が、私の中では未だに強固なイメージとして存在し続けています。なので本作も見逃すわけにはいくまいと身構えていたのですが、よくよく見れば私の苦手なファウンド・フッテージものではないですか。そのうえ廃墟に現れるのは病んでるサイコキラーではなく、ただの心霊らしい。これはいくらドイツ製ホラーと言えどもいつものようなトラウマ級のスーパーハードな病的スプラッター映像など拝めそうにない。…と、観る前からガッカリしていました。




しかし蓋を開けてみれば心霊ファウンドフッテージものでありながら、そこそこの病み具合とぼちぼちのスプラッター描写でまあまあ満足できる良作となっていました。また、POVは個人的にめちゃくちゃ苦手なんですが、本作はそこまで酷いカメラワークにはなっていないので酔わずに済みました。ここはかなりポイント高いです。


これぐらいほどほどの怖さとヌルい残酷描写ならば、誰にでも無難にオススメできますね。
商業的にも成功したんじゃないでしょうか。多分。




…なのですが、誰もドイツ製ホラーにこんなヌルくて無難なものなど求めていないのです。


まず、廃墟の恐ろしさは「マッドネス 闇に潜む者」より若干落ちる気がします。まあ実在の廃墟なのでしょうがないんですが、心霊ホラーの曰く付き舞台としては「結核患者を安楽死させていた」ではちょっと禍々しさに欠けます。怖いというより気の毒さが先に立つというかね。

そんなところに遊び半分かつ欲深さ全開で乗り込んでいく軽薄なユーチューバー共は一体どんなにムゴイ目に遭ってくれるんだろうか? 

という期待感に胸を躍らせていると、意外とチープな心霊現象に肩透かしを食らいます。お化け屋敷みたいにクッキリと悪霊が映って襲って来たりするんですよね。ユーチューバー共のやられ方も「そんなもんか」と呟いてしまう程度には大人しめ。悪くはないんですけどね。しかし、


こんなのドイツ映画じゃない!!


という失望感、フラストレーションはどうしても溜まってきます。まさかドイツ人がこんな凡庸な心霊ホラーを撮るはずがない。しかし、マイケル・デイビット・ペイトなんて知らんし、最近のドイツ人映画監督は真のジャーマンホラースピリットというものを理解していないのかも…


…と思った終盤、物語は素晴らしい転換を見せてくれます。
これだ!!この病み具合こそがドイツのホラー映画なんだ!!!


…とエキサイトしてみたは良いものの、案外大したスプラッターでもありません。せいぜい鼻チョンパぐらいです。これはいけない。一時とはいえせっかくあれだけ病んでる感を出して、ヤバ気な舞台演出をキメて盛り上げたのにたったそれだけでは結局コケオドシの「病んでるフリ」にしか見えなくなってしまいます。

「お前らこういうの期待してたんだろ?」

って言われてるようでなんだかね。方向性としては確かにその通りなんだけど、物足りなさすぎるんですよ。つーかあの3人は結局どうなったんだ。末路をちゃんと描写してくださいよ。



まあ、そういうガッカリ感はありましたが、私のように変な期待をしなければ充分良作だと思います。

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