「アンガー 閉鎖区域」 感想(ネタバレあり) 噛まないゾンビの怒りが爆発

概要

原題:Quadrant 9EV9
製作:2017年アメリカ
発売:配信のみ
監督:デビッド・マガ
出演:ドミニク・ストレッリ/マイケル・ハンツマン/ジェニファー・チャーチック

天体観測の課題を兼ねて、人里離れた山奥へキャンプにやってきた大学生5人組。彼らは立ち入り禁止の看板を破って軍の敷地へ入り込んでしまう。さらに地下への入り口を見つけたジェイソンは好奇心を押さえられず鍵を破って侵入するが、そこは70年代から開発されていたミュータント・ゾンビ・ソルジャーの研究所だった。

予告編


感想


おそらく大学生の監督が友人を集めて出演させて作った自主製作ホラー映画。
当然ながらDVDは出てないし、これもまた相当の低予算臭に包まれていますが、映像も演技もそこそこ悪くなくお行儀が良い。
なので自主製作にしてはかなり観やすい方ではあります。




若者がキャンプに行ったらミュータントが襲ってきた、ということで「ヒルズ・ハブ・アイズ」や「クライモリ」と同じ系統のホラーですが、残念ながらこのジャンルに求められるゴア表現はほぼ皆無です。

また、そのミュータント兵士が本格的に襲ってくるのもスカンクの尻の毛が伸びるより遅く、それまでは延々と大学生5人組の毒にも薬にもならない退屈なキャンプの様子を眺めなければなりません。それなら別にすっ飛ばしても居眠りしてても良さそうなんですが、合間合間に入って来る「ミュータント兵士開発の過去話」はかなり重要で、これを見逃しては本作を鑑賞する意味がなくなってしまいます。元々大した意味も価値もないと言ってしまえばそれまでなんですが、200円出してレンタルしてしまったのであれば過去話はしっかり観ておいた方がいいでしょう。


大学生はまともなジョックスのカップルとアホな不良とビッチ、ナードと実に類型的な人種で構成されており、会話も行動も無難すぎて物足りないです。一人でいいから突っ込みの入れ甲斐のある奴がほしい。


ミュータント兵士の外見と行動はあまりにも大人しく、「噛まないゾンビ」とでも言うべき決め手に欠ける半端な怪物で、ソ連を撃退すべく開発された超科学兵器には程遠い雑魚でしかありません。まあ冒頭で政府に失敗作のゴミ扱いされてますけどね。それにしては70年代から40年以上も秘密裏に維持されてきた理由が謎すぎます。


しかしそんな失敗作のカス共でもただの大学生にはそれなりに脅威であり、何人かは襲われて普通にやられてしまいます。どっちも貧弱極まりない。主人公マイクは山小屋でダイナマイトを発見しそれで立ち向かいますが、爆発エフェクトまでもが爆竹レベルの貧弱さ。CGの類は一切使えなかったようです。そこは安い合成でも構わないから大爆発を起こしてほしかった。


自主製作映画の場合、映像などのクオリティよりも「俺はこういうのが撮りたいんだ!」という作り手の強い主張とか情熱的なものを感じさせてくれればそれでいいかなと思っているんですが、本作の場合ミュータント兵士の悲しい過去がそれに該当します。ある切っ掛けで愛する妻子を思い出したミュータント兵士・レイは、学生を襲う側から一転し彼らを守るために戦いはじめます。これはこの手のホラーとしてはまあまあ目新しい展開と言えます。

しかし、本作の見所、オリジナリティはそれが全てです。
闘うと言っても子供の喧嘩みたいな取っ組み合いだし、妙にテンションの高い電子音楽が大自然に空しく響く変なラストシーンはミュータント兵士レイの愛と感動(?)を台無しにしている感が否めません。とはいえ、本当に何にもないただのC級ホラーに比べればそれだけでもまだ救いがあった方だと言えるでしょう。特にオススメするほどの出来でもありませんが、インディーズホラー映画マニアの方は一瞥してみてもいいのではないでしょうか。

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