「モンストラム/消失世界」 感想 ただでさえ混沌としてるのに字幕がふざけてて余計カオス

概要

原題:Monster
製作:2018年中国
発売:インターフィルム
監督:ダイ・ジンルアン ユエン
出演:ヤン・スー/ジェン・ミン/ハン・ヤンボ/ルー・イェ/チェン・サンム

海城へ走っていたバスが、突如荒涼とした砂漠の異空間へと転移。さらに、乗客全てが失神し記憶喪失となってしまう。バスから降りた乗客は謎の砂嵐に巻き込まれ全員死亡。わずかに生き残った数人は砂漠からの脱出を試みるが、今度は謎の怪物が彼らを襲う。

予告編





感想

バスが異次元砂漠へ転移というスケール感、乗客が全員記憶喪失というサスペンス、リッカーのような怪物の群れが襲ってくるパニックホラー、罪深い大人たちが幼い少女を守るために一丸となり改心していくヒューマンドラマ&サバイバル。これら全てをまんべんなく盛り込みつつ、尺がたったの1時間20分ぐらいしかないという奇跡のような闇鍋的中国映画。


序盤からいきなり大風呂敷を広げ過ぎじゃないかと心配になりますが、なかなか引き込まれる導入ではあります。とはいえ、多分畳まないんだろうなということも計算に入れて鑑賞する必要もあります。結局、記憶を失ったのも孟婆湯を飲まされたせいなんだろうし、砂漠地獄も怪物の存在も「仏陀に与えられた苦難」であったとしか解釈できませんでした。ワームホールという言葉も出てきたけど、これはSFとは言いにくいかな。


1915年のイギリス軍もそこに飛ばされてきた痕跡があった、というのは中国ならではの展開です。中国から見たらイギリス人など仏陀に罰せられて当然の邪悪極まりない紳士共でしょうからね。あのリッカーみたいな怪物も実は英国紳士たちの成れの果てなのかなとか思いながら観てましたが、特に何の考察もありませんでした。どうでもいいけどこの怪物、CGがやたらお粗末なわりに遠慮なく映しまくるので画面が安っぽくなり過ぎていけない。これは設定的にもTVドラマ「ランゴリアーズ」を彷彿とさせる雰囲気です。


本来地獄に堕ちるべきではない無垢な少女がなぜか巻き込まれてしまっており、罪を犯した大人たちが彼女を守るべく力を合わせて戦う…という話の中で、孫悟空のお面と共に「西遊記」が効果的に使われます。全員記憶喪失なので便宜上仮の名前を付ける必要があり、少女が「猪八戒パパ」だの「沙悟浄パパ」だのと彼らを呼ぶわけですね。

で、三蔵とか沙悟浄はいいんですが、問題は孫悟空です。
日本では孫悟空と言えば、頭に輪を付けたサルではなくカカロットの方。
別にそれを否定するつもりはありませんが、本作の孫悟空は明らかにサルの方なんだからカカロットはまったく関係ない。にも関わらず、せっかくの感動的なクライマックスで急に

「オッス!オラ孫悟空だ!オラが相手だ!」
とか
「オラは孫悟空 すごく強いんだぞ」

とか言わせるのは非常によろしくない。
強がりとはいえあの場面で「オッス!」は無い。笑ってしまうだろ。
B級映画とはいえ字幕でこういう悪ノリはいかがなものか。


わりとマジで泣いてしまいそうなぐらい悲壮感溢れる素晴らしいクライマックスだったのに、こんな字幕に出てこられたら雰囲気に合ってなさすぎてもうほんと笑うしかない。面白いっちゃ面白いけど、なにもかも台無しですよこれは。ということで、本作を見る時は吹き替えでご覧になることをおすすめします。とはいえ確認したわけじゃないので吹き替えでも同じことをやらかしてるかもしれませんが。


コメント

匿名 さんのコメント…
はじめまして。
「1915年のイギリス軍もそこに飛ばされてきた痕跡があった…」
とありますが、自分自身どこかで聞いたような…と思いザッと調べてみたところ、「ノーフォーク連隊集団失踪事件」と言う事件(都市伝説?)が1915年にトルコで起きた、と言う記事を発見しましたので、多分その事件がその設定のアイデアの元になっているのだと思います。
岩石入道 さんの投稿…
コメントありがとうございます。
なるほど、そういう元ネタがあったと。寡聞にして知りませんでした。
あの異次元砂漠にはどこの国からでも入ってしまう可能性があったということですね。
それはそれであの異次元砂漠は一体何だったのかと疑問は深まるばかりですが…