概要
原題:Upgrade製作:2019年アメリカ
発売:ハピネット
監督:リー・ワネル
出演:ローガン・マーシャル=グリーン/メラニー・バレイヨ/ベッティ・ガブリエル/ハリソン・ギルバートソン/サイモン・メイデン/ベネディクト・ハーディ
近未来のアメリカ。カーエンジニアのグレイはある日突然謎の4人組に襲われ、妻を殺され自身は全身麻痺になってしまう。失意の中、顧客の科学者がグレイにAIチップ”ステム”を埋め込むことを提案してくる。”ステム”によって体を動かせるようになったグレイ。しかし、ステムには意思があった。グレイはステムとコミュニケーションをとりながら犯人を捜し復讐を始める。
予告編
感想
これはすごい。一見よくあるありふれた近未来SFのようでいて、その実映像もアクションもストーリーもかなり斬新。AIものでまだこんなアイディアがあったとは。オチも伏線が効いていて素晴らしく綺麗に決まっている。最高です。監督・脚本は「ソウ」のリー・ワネルですが、あれからもう17年ぐらい経つのにまだこんな傑作を生み出せるとは天才的と称賛せざるを得ない。
妻を殺されたうえ、全身麻痺にされた男グレイが秘密裏に開発されたAIチップ・ステムを体に埋め込むことで超人的な力を得て、犯人たちに復讐していく。実にシンプルな話です。
体内に埋め込まれたステムはあくまでも分断された脳と体との橋渡し役のはずだった。しかしステムには人格があり、グレイの脳に直接語り掛けてくる。自分の力があれば犯人たちを捜し出し、復讐を果たすことが出来るのだと…
ストーリーについてはこれ以上触れませんが、首から下を人工知能に委ねているという設定で行われる格闘シーンがすごくユニークで面白い。動きは超絶素早くなったロボコップのようで、先読みと計算を駆使して立ち回っている感じ。グレイ役の人もあんな非人間的な動きをするのはさぞかし大変だったでしょうね。機械的で独特なカメラワークがそれを実に印象的に見せてくれます。
そこは単純に爽快感満点な見せ場でもあり、AIの方が人間よりも人体をうまく操れるようになったのだという危うさの表現にもなっている。
なのでそれだけ超人的な戦闘能力を発揮して仇をボコりながらも、グレイの首から上はステムの強さと容赦のなさに引き気味。ここの体を共有する人外との相棒感は寄生獣などに通じるものがありますね。しかしステムは見た目には一切表れてこないのに、これだけの存在感を出せているのには感心します。埋め込む前の姿も安っぽい鉄のゴキブリみたいな外見なんですけどね。
あと、監督が「ソウ」の人だからか意外とえぐいです。まあ「ソウ」ほどではないにしろ、顔面が破裂したりナイフで切り刻んだりと若干オーバーキル気味な見せ場が多い。ステムの埋め込み手術シーンもちょっと…ご飯食べながら観てたらちょっと気持ち悪くなりました。いや、ながら見なんかするなよと言われるかもしれませんが、グロがあるとは思ってなかったので…
また、クシャミのしぶきに刃を付けて飛ばして攻撃するなどトンデモなギミックで笑いをとることも忘れない。全方位的に隙の無いエンターテイメントです。
自動運転車のチープさからも察せられる通り製作費わずか300万ドルの低予算映画ですが、さぞかし自由に喜々として作ったんだろうなあと思わせるエネルギーに満ちています。悪いところはほとんどない。しいて言えば犯人グループではなくグレイばかり疑って追ってくる警察官が少々腹立たしいぐらいかな。
ということで、これは非常にオススメです
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