概要
原題:The Man Who Killed Hitler and Then Big Foot製作:2018年アメリカ
発売:トランスフォーマー
監督:ロバート・クシコウスキ
出演:サム・エリオット/エイダン・ターナー/ラリー・ミラー/ケイトリン・フィッツジェラルド/ロン・リヴィングストン
かつてヒトラーを暗殺した伝説的な兵士カルヴィン・バールは、老人になった今もなお人を殺したことを悔いながらひっそりと暮らしていた。そんなある日、彼の元にカナダ政府とアメリカ政府から「カナダ山中に出現したビッグフットを殺してほしい」という依頼が入る。なんとそのビッグフットは恐ろしい未知の殺人ウイルスを撒き散らし、既に相当の被害が出ているというのだ…
予告編
感想
トランスフォーマーってどうしようもない映画ばっかり配給してる胡散臭い会社だとばかり思ってたら、「ディアスキン 鹿革の殺人鬼」という奇跡的珍作に続いてまたしてもこんな凄まじい珍作映画を持ってきてくれました。いや、見直しましたよ。トランスフォーマーは今の日本で最も有能な映画配給会社と言えるでしょう。
それにしても、このタイトルは反則的なほどインパクトありすぎですよね。しかもトランスフォーマーが勝手につけたわけじゃなくて原題そのまんまだし、内容的にもその通りだから恐れ入る。とはいえ宣伝文句にはかなり偽りありで、
この男に狩れないものはない!ただの戦争映画ではなく、クリーチャー、アクションなど数々のジャンルが融合したエンターテイメントの最高傑作だ!
こんな風に言っちゃってますが内容は全然違いました。
いやまあ、戦争もクリーチャーもアクションもあるっちゃあるんだけどそれがメインなのではなく、ものすごく寂寥感と哀愁の漂う老人の回顧録といった趣きなんです。ジャンルで言えばしっとり系のヒューマンドラマですね。戦争とはいえかつて人を殺してしまったことや、愛する女性と結ばれることなく終わってしまったことを悔やんでいる老人カルヴィンの人生が実に丁寧に描かれてます。どんなトンデモバカ映画なのかと思いきやこのシリアスさには面食らった。カンヌとかに出品されてそうな格調高さすら感じます。
私ごときスカベンジャー的生物がこんな気品のあるヒューマンドラマを観てもいいのだろうか?
ビッグフットってあのUMAがのこのこ出てくるわけじゃなくて何かのメタファーとして使われているだけなのではないだろうか?
…という不安に駆られましたが、本作のビッグフットは決して看板倒れではありませんでした。全人類を脅かす驚異の殺人ウイルスを撒き散らすスーパーモンスター・ビッグフットとの手に汗握る大激闘もしっかり描かれているのです。
「タイトルに『プレデター』『ジュラシック』『ビッグフット』が入っている映画は例外なくクソ映画」という法則があったのですが、本作で初めてそれが打ち破られたことになります。これは歴史的快挙と言わざるを得ない。
中盤まではあれだけ寂寥感に満ちたいぶし銀的人間ドラマをじっくり描写しておきながら、いきなり軍用ヘリでカナダの森へ向かうシーンでは「プレデター」的なノリすら感じる。
こんな異様な転調を見せた映画は初めてです。
かつてヒトラーを暗殺したのに何も報われなかった男がまた似たようなミッションに向き合って何を感じるのか…っていうテーマがあるにせよ、何でまたそれが「殺人ウイルスを撒き散らすビッグフット」なんでしょうか。ビッグフット自体は草食性だし悪意もないからそれがまたカルヴィンの苦悩を生むわけですが、やっぱり何でビッグフットなのかという疑問は解けそうにない。ナチスの描写はすごくリアルだったのにビッグフットは何かぞんざいな作りだし。それに、あんまりビッグでもない。となると、やっぱりビッグフットは共産主義かなんかのメタファーだったんでしょうかね。
まあ何にせよ、高品質なヒューマンドラマと奇怪なモンスターパニックの異様な融合を見られただけでも非常に満足度の高い作品でした。
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