「ウィッチクラフト 黒魔術の追跡者」 感想 魔女 vs.人身売買組織

概要

原題:Bruja
製作:2019年アルゼンチン
発売:インターフィルム
監督:マルセロ・パエス・キュベルス
出演:エリカ・リバス/ミランダ・デ・ラ・セルナ/レティシア・ブレディス/パブロ・ラゴ

現代に生きる魔女セレナは、微妙に迫害されながらも娘ベレンと二人で貧しく平和に暮らしていた。ある時、ベレンはレース場のコンパニオンのバイトをすることに。しかし、それはバイト募集を装った人身売買組織の誘拐だった。娘が誘拐されたと知ったセレナは、黒魔術を駆使して組織を追跡するが…


予告編




感想


これはかなりのインパクトを持つ圧倒的珍作でした。

誘拐された娘の母は魔女だった―。 この魔女が人身売買組織に立ち向かうという誰も観たことがない斬新な設定のサスペンス・スリラー。

この宣伝文句に偽りなし!




人身売買組織に食らいついていく親、といえば「舐めてた親が元CIAの凄腕だった」映画の「96時間」が真っ先に思い浮かびますが、本作は元CIAがそのまま「魔女」に置き換えられたような話です。


しかし魔女セレナにはブライアン・ミルズのようなスマートさは微塵も無く、黒魔術発動のためには血が必要なのでやたら自分の体をザクザク切り刻んだり、ガラスを喰ったりしてドロドロ血を垂れ流しながらギェェェウェェエと唸っている。何だコレ。

娘を救うためなら自傷行為も辞さない強い母の愛が表現されていると言えばそうだし、過酷なアルゼンチン社会では黒魔術の存在がか弱い女性にとっての救いになってるらしいので、ことのほかシリアスな描写だと受け止めるべきかもしれません。


…が、あまりにもぶっ飛んでるというかとにかく異様な絵面ばかりなので、正直笑ってしまうのも事実。珍作マニアの好事家にとっては非常においしい映画です。そうでない人が見ても普通に楽しめるんじゃないかと思えるクオリティの高さも備えています(多分)



ところで本作はアルゼンチン映画なんですが、アルゼンチンと言えば人身売買組織。人身売買組織と言えばアルゼンチン。私の中では既にそんなイメージが固まってしまいました。だってそんなアルゼンチン映画ばっかりだし…。まあメキシコとかブラジル映画とかもそういうの多い気はするけど。全体的に南米の治安のイメージが良くない。

しかもあっちの組織は決まって政治家や警察ともガッチリ癒着しているので、誘拐された方は全く持って救いづらいことこの上ない。助けを求めても逆効果なんですよね。アルゼンチン映画観るたびに思うけど、あれほど腐った政治家と警察のいる国でまともに暮らせる気がしない。映画だから誇張されてるにしてもひどそう。


本作に出てくる市長も警官も組織の奴らも大概とんでもない鬼畜ばっかりです。胸糞悪いことこの上ない。そんな鬼畜共に、魔女セレナの黒魔術が天誅とばかりに炸裂していく爽快スプラッターアクションでも良かったんじゃないかなと思いますが、そんなことはなく。結構地味な魔術しか行われません。対人戦でそんなに強いっていうことも全然なくて、セレナは組織を発見してもボコられたり刺されたりしてしまう。ただでさえ自傷行為で苦しんでるのにこれはキツイ。


そんなセレナの逆転の一手に使われるのが、たまたまその夜に事故死した市長の奥さんなんですが、あれって本当にたまたま事故死しただけなんですよね。ちょっと偶然が過ぎるというか。あの夜に市長の奥さんが事故死してくれてなかったらどうしようもなかったのではないか。

そんなような納得のいかなさも残りますが、そもそも黒魔術で何ができて何ができないのかも分からんので納得もくそもなかった。ただ、魔女と人身売買組織+国家権力の奇怪な異種格闘戦を楽しめたのだから全て良しとしようではないか。そんな風に思いました。








コメント