「KIN/キン」 感想 ダメ人間にも救いの手を

概要

原題:kin
製作:2018年アメリカ
発売:キノフィルムズ
監督:ジョナサン/ジョシュ・ベイカー
出演:ジャック・レイナー/ジェームズ・フランコ/ゾーイ・クラヴィッツ/デニス・クエイド/マイルズ・トゥルイット

デトロイトで養父と暮らすイライジャは、ある時廃墟で未来的な銃を発見し持ち帰る。同じ頃、イライジャの兄ジミーが刑務所から出所して帰って来るが、ジミーはギャングに6万ドルの借りを作っていた。やむなく金を強奪したジミーとイライジャはギャングと謎の未来人に追われることになるのだった。

予告編




感想


謎のプラズマキャノンを拾った少年イライジャが追手と戦い、最後の最後でプラズマキャノンの正体と自分のことを知るという話。


そこに至るまでの話は、クズな兄貴ジミーの逃避行に巻き込まれてストリップバーで暴れたり、カジノで遊んだりと何だかとてもまったりした雰囲気。兄弟ではあるが血のつながりはないジミーとイライジャの奇妙な絆みたいなものが味わい深いヒューマンドラマとしては楽しめるけど、一見するとSF感はほとんどないしSF要素が必要だったとも思えない。

その辺は養父とジミーが白人でイライジャが黒人であることに深い意味があるんでしょうけど。お前は貧困と暴力の世界から抜け出せる人間なんだよ、的な。特にデトロイトの貧困層は相当酷い境遇にいるイメージがありますしね。

とはいえ、あのような突飛なSF要素に頼らなければ暴力と貧困の世界からは抜け出せないようにも見えてくるのもちょっとどうなんだとも思います。本作のムード的には前向きな希望を見せようとしてるタイプの映画ですから。

まあ私もどちらかといえば貧困層ですし、遠いデトロイトの黒人貧困層がいかに苦しかろうが全く知ったこっちゃないのですが、そんな人間からすると本作における最大のエンタメ要素はジミーの常軌を逸したクズ人間っぷりです。

ムショから出てきたは良いが、ムショの中で用心棒を頼んでいたギャングに6万ドルも払わなければいけない。それを父親の会社から盗もうとして父親を死なせてしまう。それだけでも相当アレなのに、その盗んだ金で用心棒代も結局払わずにイライジャを連れ回してストリップバーやカジノで羽目を外して豪遊するっていう。しかも犯罪にも巻き込んでいる。これはひどい。

良心の欠片もなく救いようのないドクズですが、どういうわけか「悪い人じゃなさそう」と言われるようなキャラクターとして表現されている。行いだけを見れば、どう考えてもクソ野郎なんだが。でも愛され系のダメクソ野郎ってたまにいますよね。イライジャも父親の件を知った時は怒ったものの、結局許しているし助けてもいる。

つまり本作は、もともと貧乏人や愚かでバカな人間を救済したいという気持ちがあるため、ジミーのようなアホにも死や絶縁といった報いを与えなかったのではないか。全然的外れかもしれませんが、そんな風に思ってしまいました。

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