概要
原題:O Doutrinador/The Awakener製作:2018年ブラジル
発売:キュリオスコープ
監督:グスタヴォ・ボナフェ
出演:キコ・ピソラート/タイナ・メディナ/サミュエル・デ・アシス/マリリア・ガブリエラ/カルロス・ベタン/エドゥアルド・モスコビス
警察の特殊武装隊員・ミゲルは悪徳州知事の医療費横領を暴こうとしていた。しかし州知事は釈放されてしまい、ミゲルの幼い娘は射殺されてしまう。デモ隊に紛れて州知事に復讐を果たしたミゲルは、この国の腐敗を一掃するため「啓発者」となり汚職政治家を始末していくが…
予告編
感想
「ゴースト・キラーズ」の記事で「ろくなブラジル映画を観たことがない」と書いたらコメント欄でオススメしてもらえた作品。いつも見ているブラジル映画のようにドロドロした汁気がないし、カニバリズムもない。これは確かに清潔感溢れる素晴らしいブラジル映画でした。
本作はコミックの映画化作品とのことです。
警察官が家族を殺され、鬼と化して復讐を果たすもそれで終わらず世直し活動を続けていく。話自体はすごくありがち。特にアメコミとかでよくある設定ですね。まず「パニッシャー」を連想しました。
しかし、本作のシリアス度は他の同系統の作品と比べてもかなり高い。普通こういうのは町をうろつく犯罪者を仕留めていくものが多いんですが、本作はターゲットが悪徳政治家に絞られています。娘の仇を討つ時も、実行犯とかは一切気にせず悪徳政治家さえ仕留めれば良しとするスタイル。とにかく諸悪の根源は政治家。最初に出てくる州知事が「公的医療費を6割も横領していた」ってのは笑いましたが、もしかして結構リアルな描写なのかな…
南米の映画を観るとほぼ例外なく政治家と警察の腐敗っぷりが凄まじいことになってますし、たまに見る海外ニュースでもそういう印象を受けます。ま、日本の政治家が清廉潔白かと言うと全然そんなことはないと思いますが、南米のそれは桁が一つ違うような感じです。
本作中でも
「政治腐敗は社会の歯車の一部なんだよ」
「汚職にまみれた人間もこの国の一部だ」
などと非常に深い諦観の念が込められたような台詞がありますが、「それでもせめてフィクションの世界では奴らを思いっきりブチ殺してやりたい」という欲求を強く感じます。
そこんところが「パニッシャー」等とは違って製作者が本気で悪徳政治家を憎みながら作ってそうなので、ただのエンタメとは思えない切実さがあるんですよね。「ヒーローに直接掃除してもらわないと腐敗は絶対に根絶できないだろう」っていう。
ただ、主人公ミゲルは一見ダークヒーロー然とした格好をしてますが、別にただ目が光るガスマスクを付けてるだけの普通の人間なんですよね。強いことは強いけど。
彼を現実離れした「超人」にしなかったのは、「現実にこういう奴が現れてくれないかな…」という希望が捨てきれてないからではないかと思います。
まあ、現れるわけないんですけどね。
政治家暗殺アクションの爽快感とリアルなやるせなさが同居する良いブラジル映画でした。
コメント
さて内容ですが、確かに『パニッシャー』等よくあるストーリーですよね。でも。冒頭のミゲルがマスクをかぶるシーン、そこでためらいもなく付けて悪を裁く姿に「民衆の怒りから生まれるべくして生まれたダークヒ-ロー像」が見えて、挿入曲と合わせて好きだったんです。岩石入道さんにも見てもらえてよかったです。
私は地雷を踏むのは気にしないんですが、最近は地雷というより肥溜めに落とされるようなのが続いてたのでありがたくオススメに飛びつかせて頂きました。
設定はありがちでも、お国柄によって全く違った味わいになるところが実に面白いですね。ただ最近こういうのを見ると「自分も悪徳政治家になってうまい汁を吸ってみたいなあ」などと考えるようになってしまいました。考えるだけですけどね。
自分も悪徳政治家に(笑)ミゲルみたいなのにやられない限り、やりたい放題ですからねー、彼らは。
P.S リンクありがとうございます。ただ、ソレガシのシネマ“鑑評巻(かんぴょうまき)”なんです。わかりにくくてスミマセン。
しがない会社員になるくらいなら、悪徳政治家を目指しておけばよかったと後悔しております。まあ現実的には家柄とコネが物をいう世界なんでしょうけどね。南米は特にそんな感じがしました。
うかつにも漢字を間違えていた…大変失礼しました。
修正しておきました。
修正ありがとうございます。でも、論じゃなくて巻なんです…
度重なる失礼、大変申し訳ございません。
今度こそ正しく修正しました。