概要
原題:RAMBO:Last Blood製作:2019年アメリカ
配給:ギャガ
監督:エイドリアン・グランバーグ
出演:シルヴェスター・スタローン/パス・ベガ/セルヒオ・ペリス=メンチェータ/オスカル・ハエナーダ/アドリアナ・バラッザ/イヴェット・モンリール
ミャンマーでの戦いの後、故郷に戻ったランボーは旧友のマリアとその孫娘ガブリエラと一緒に穏やかで幸せな生活を送っていた。しかしある日、ガブリエラがメキシコの人身売買組織に誘拐されてしまう。
予告編
感想
さてようやく「ラスト・ブラッド」公開日です。コロナ対策で映画館の座席数が実質的に半減しているため、満席を警戒して前もって席を予約してから行ってきたんですが、観客は私を含めてたったの3人しかいませんでした。公開初日でこれはいくらなんでも少なすぎるだろ。さすがに寂しすぎる。
「ランボー/最後の戦場」がマイベストムービーな私にとってどうしても過剰な期待感を抑えられない新作でした。
だがしかし、先に結論を言ってしまうと本作はちょっと…いやかなりイマイチに感じてしまいました。
ランボーシリーズを面白かった順番に並べると、
4>1>(超えられない壁)>5>2>3
といった感じです。
私の中では4作目があまりにも神格化されてしまっているのでこういう結果も十分予想はしていましたが、それにしてもこの内容は厳しい。
とはいえ、2や3よりは遥かにマシなのでランボーシリーズのファンは観ておくべきでしょう。
で、その内容についてですが…
人身売買組織に誘拐された娘(養女)を助けに行く。ってことで、もろにリーアム・ニーソンの「96時間」と同じような話です。ランボーシリーズは必ず「戦争」がテーマに深く関わっていたんですが、本作では初めて戦争と関係ないランボーとなっています。ある意味新鮮ではある。まあ73歳にもなって戦場へ繰り出すのもどうかと思うしそれはいいんですが。
先に良かった点に触れておくと、序盤でその娘(養女)と幸せな生活を送っているランボーの姿は非常に感慨深いものがありました。今までのランボーでは世捨て人か戦闘マシンのような姿しか見たことありませんでしたからね。また「最後の戦場」のラストで故郷に帰った後、ランボーは無事に静かな余生を送ることが出来たのかどうかが気になっていたので、その辺がしっかり描かれていた前半部分は人間ドラマ的には非常に満足いくものでした。
問題は娘がメキシコへ行って人身売買組織に誘拐されるところからです。非常にどうでもいい理由でむりやりメキシコへ乗り込み、不用心極まりない軽率な行動であっさり誘拐されてしまう。飛んで火に入る夏の虫としか言いようがない。娘の落ち度を最小限に留めていた「96時間」に比べるとどうしてもかなり雑に見えてしまいます。
また、その知らせを聞いて速攻で組織へ単身で殴りこみに行くランボーはさすがに耄碌したとしか思えない。いや、あまりにも堂々と正面から突入するもんだから何か策でもあるのかと思ったら何もなくて普通にボコられるっていうね。意味が分かりませんよ。どうやって助けるつもりだったんですか。「96時間」と比べなくてもこれは雑。そこでぶっ殺されても全然おかしくないのに何だかんだ見逃してもらえるっていうのも不思議。居場所を突き止めるまでは良かったんですが…。
中盤の展開は非常に鬱です。これはキツすぎるでしょう。「最後の戦場」で軍事政権による少数民族弾圧の現実と人体が爆散する過酷な戦闘を徹底してリアルに描写していただけに、本作も人身売買組織の凄惨な現実を描写してくる。表面的には「ウィッチクラフト」やら「ハイパーソムニア」などの南米映画で見慣れた光景ではあるんですが、ここまで踏み込んだ映画は他になかった。
しかし、正直言ってそんなものはあんまり観たくないんですよ。娯楽映画に求められるのはギリギリのところで救われる活劇であって、いいように惨たらしい目に遭わされる絵面ではない。
ランボーが人身売買組織に怒りを爆発させるためにはそれくらいの描写が必要だとする向きもあるでしょう。しかしどうもそういう作劇のためのいけにえとされた感が否めないというか。ランボーが考えなしに正面から殴りこんだせいでもありますからね…。
それでも、クライマックスでの人身売買組織とのバトルが盛り上がってくれればそんな欠点は帳消しにできたはずなんですよ。だけど、そっちの方でも「最後の戦場」ほどグッとくる要素は無い。本作はランボーが自宅で敵を迎え撃つってことで、自宅地下のトンネルにトラップを仕掛けまくって敵を誘い込むという形です。それ自体は非常にいいアイデアだと思います。元々ランボーはゲリラ戦が得意で1作目でもトラップを駆使した戦いを見せていましたからね。ジジイになってろくに動けないランボーを違和感なく活躍させられるという面から見ても一石二鳥の作戦です。
ただいかんせん敵が人身売買組織のメンバーたちでは物足りないにもほどがある。彼らは確かに冷酷で恐ろしい存在かもしれませんが、ミャンマーの軍事政権と比べればミジンコレベルのクソザコに過ぎません。戦闘能力は一般人に毛が生えた程度じゃなかろうか。そんなカス共がランボーのトラップ地獄に太刀打ちできるはずもなく、その結果本作のクライマックスはランボーによる一方的な殺戮です。あれは戦闘ではない。
「グロ描写がすげえ!」という声もあるようですが、あんなのブローニングM2で嵐のように人体爆裂させていた前作に比べたら全然大したことないと思う。むしろあんなあっさり楽に殺しちゃって本当にそれで気が済むのか?とさえ感じました。時間的にも10分くらいしかなかったと思います。そこ以外にアクションシーンは無いし、アクション映画と呼ぶにはかなりさみしい時間配分。ランボー73歳だから仕方ないとはいえ…
あとなんかヒロインっぽい感じだったメキシコのジャーナリストは結局何をしに出てきたのか。クライマックス前でランボーに「協力してくれ」と頼まれていたものの、何を手伝ったのかわからんままだしそれ以降出てこない。それならランボーの怪我を治療したところでお役御免で良かったように思えてならない。
ランボーファンであるがゆえに長々と文句を連ねてしまいましたが、それでも2や3より面白いのは間違いないです。2と3は私の中ではほぼ無かったことになっていますが、本作は「最後の戦場」に続くエピローグ的な小品として扱おうかなと思います。エピローグにしては悲惨すぎるのが問題ですが、そもそもランボーは人を殺しすぎているので幸せになってはいけない人物なのかもしれません。
コメント
平日夕方とはいえ劇場に3人しかいなかったのはさみしすぎました…