概要
原題:THE FARM製作:2018年アメリカ
発売:プルーク
監督:ハンス・シュテルンスヴェルト
出演:ノラ・イェサヤン/アレック・ゲイロード/ケン・ボロック/ロブ・ティスデイル/ジケリー・ミス
旅行中、とある田舎の宿に泊まったノラとアレック。だが、目が覚めると檻に入れられていた。なんとそこは人間を家畜扱いする狂気の人間牧場だったのだ…
予告編
感想
ヴィーガニズム過激派が、
「いかに人間の営む畜産業が牛や豚にとって残酷なものであるかを知れ!」
という偏向的な思想を思い切り顔面に投げつけてきたようなヴィーガニズムプロパガンダ映画。私は例によって何も考えずに単なるエンタメホラーだと思って借りてきたので、このメッセージ性の強さに面食らいました。
田舎の安いモーテルに泊まった若い男女が檻に監禁され、サイコ野郎に家畜同然の扱いを受ける…という話なので、まあ序盤はよくある田舎ホラーといった趣き。ただ「悪魔のいけにえ」系と大きく違うのは監禁されてる被害者の数がかなり多いこと。サイコ野郎も大勢いて、ちょっとした村くらいの規模で人間畜産業を営んでいます。彼らはリーダー以外みんな無言で動物のお面を被っているのが特徴。
普通の田舎ホラーであれば囚われたノラたちが酷い目に遭わされつつも反撃・脱出の糸口を探す流れがメインになるんですが、本作はそんなことより人間畜産業の平凡な日常みたいなのを延々と見せてきます。囚われた女性たちが強制的に子供を産ませられ母乳を搾取されたり、出なくなったら食肉として解体されたり。不要な赤ん坊をシメるシーンなどもあり、残酷だし怖いといえば怖いが淡々としていて起伏が無く、狂気は漂っていますが退屈に感じます。
そういうことを人間が人間にやっているのを見ると効率的に人肉食を追求した変態的カニバリズムコミュニティにしか思えませんが、本作のメッセージはカニバリズムではありません。
あくまでヴィーガニズムです。
「お前らが肉を食ってるせいで牛や豚はこんなに苦しんでるんだぞ!
人間に置き換えれば鈍いお前らでも分かるだろ!
分かったらお前もとっととヴィーガンになれや!」
という本作の主張はまあ分からないでもない。
私も動物好きな方だし、肉を食べるのに何となく抵抗を感じる時もありますよ。
が、だからってこうもそのまんまな映像にして見せられても困る。
発想が単純すぎます。
ゲッベルスじゃないけど、大衆に何らかの主義主張を浸透させたいならそのメッセージは娯楽に塗り込めるべきだと思うんですよ。何を言いたいにせよ、まずその映画が娯楽として優れていなければ観客は受け入れてくれないってことです。
もし本作が「テキサス・チェーンソー」並みのクオリティで楽しませてくれたなら私もヴィーガニズムについて真剣に考えたと思いますが、この面白くなさでは「クソ映画乙!」と切り捨てざるを得ない。いやまあそこまでひどい出来でもないが、誰もマジメに受け止めることはないでしょう。むしろ反感を買いかねない。
どうせやるならもっと残酷な人肉料理とかエグい解体シーンとかをバンバン見せてくれれば悪趣味ホラーとして面白くなったんじゃないかと思うんですよね。そしたら別の意味で肉を食べる気も失せるだろうから結果オーライでしょう。そういう工夫というか観客を楽しませようという気概が少しでいいから欲しかった。
まあそれでも一応終盤では思い出したようにノラの脱出劇になりますが、あまりにアッサリしていて何とも…。ノラが助からないのも本作のムード的に初めから分かり切ってますし。それにジャケもタイトルメニューもラストカットの画像を使ってますからね。
ということで、インパクトはあるものの製作者の主義主張ばかりが前面に出ていてサービス精神に欠ける作品でした。これよりは人間を作物扱いする珍作映画「地獄のモーテル」を見た方が楽しいと思います。
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