概要
原題:4 mosche di velluto grigio
製作:1971年イタリア
発売:ビデオメーカー
監督:ダリオ・アルジェント
出演:マイケル・ブランドン/ミムジー・ファーマー/ジャン=ピエール・マリエール/バッド・スペンサー/フランシーヌ・ラセット/アルド・バフィ・ランディ
ロックバンドのドラマーであるロベルトは、自分をつけ回す謎の男に悩まされていた。ある時、その男を捕まえて問い詰めるも、揉み合いになりうっかり殺してしまう。しかもその瞬間を奇怪な仮面の人物に撮影されていた。その後、ロベルトは謎の人物から脅迫を受けることになるが…
予告編
感想
ダリオ・アルジェントの初期作品。
これがもう50年も前の作品になるということに慄いてしまいます。また、本作は権利関係が複雑で長らくソフト化されず、2010年になってようやくDVDが出たのですが「そのうち観るか~」とかボンヤリ思ってたらいつの間にか10年も経ってたというね。全く時間の流れというやつはあまりにも速すぎてついていけません。
で、2020年にもなってようやく鑑賞してみたわけですが…
これはかなりの怪作というか珍作というか、相当変なサスペンス映画でした。いやサスペンスではなくジャーロと言うべきですが、これは今でも通じる言葉なのかな。とにかく若い頃のアルジェントはこれでもかと尖りまくってます。こんなの思いついても普通やらんぞ、と思うような珍ネタが満載です。
内容は、うっかり自分のストーカー?を殺してしまったドラマーのロベルトが、それを目撃していた謎の人物に脅迫されるというもの。
まず友人も犯人もほぼ出入り自由なロベルトの自宅がおかしい。70年代とはいえセキュリティガバガバ。しかも故意ではないとはいえロベルトは殺人を犯してしまっていますが、それについて奥さんのニーナと話しているところをこっそりお手伝いさんとか親戚に聞かれまくり。昔のイタリアは大らかだったんだなあと思います。今もか?
で、犯人を知ったお手伝いさんが逆に犯人を脅迫しようとして殺されたり、ロベルトに殺されたふりをして実は生きていたストーカーが犯人に殺されたり。殺人シーンはまだそんなにグロさはありませんが、カメラワークは独特で印象に残ります。
その後ロベルトは友人に紹介された私立探偵を頼るのですが、そいつのキャラが異様に濃い。この3年間で一度たりとも事件を解決したことがないというポンコツ探偵なんです。だが84件も未解決が続いたのだから統計学的には次こそ必ず解決できるはずだ!という変な自信に満ちている。もはやコメディ映画。こんな良いキャラなのにわりとすぐ退場してしまったのが惜しい。
本作は中盤あたりになってくると消去法で犯人は察しがついてしまうんですよね。ただ、動機が全く読めない。まあキ○ガイすぎて読めるわけないんですがね。
…で、警察がなんと「被害者の網膜に死ぬ寸前の映像が残ってるから見れるよ」、などと言いだします。2020年現在でも成し得ない驚愕の最先端科学捜査。作中の刑事によれば1971年のアメリカとドイツでは既に実用化されていたとか。今見てもウソくさいのに当時の観客はどう思ったのやら…
で、その網膜に残された最期の映像がタイトルにもなっている「4匹の蝿」。
一見犯人の特定など出来そうにない映像ですが…
以下ネタバレ
…と思ったら、それは犯人が首から下げてたペンダントだった、という…
いや~、ハエのペンダントって何なんだよ??
悪趣味すぎるだろ?
別にハエじゃなくてもハチとかカナブンでも良かったと思うんですが。
まあ私の腐ったオシャレセンスよりも半世紀前とはいえファッションの本場イタリアのセンスですから、ハエのペンダントも実は素晴らしく高貴でファッショナブルなアクセサリーだったのかもしれませんが…
ハエは置いといて、動機の方も最高に理不尽です。
犯人は父親に恨みを抱いていたが入院中に亡くなってしまったので復讐することができず、代わりにたまたま父親にそっくりだったロベルトをいたぶって殺そうとしていたっていう話。ロベルトからしたら「知らんがな」としか言いようがない話ですよこれ。
ラストは車で逃げた犯人が盛大に事故るところを、何の意味も無くスローモーションで1分ぐらいかけて見せてくれる。芸術的なまでに強引なオチの付け方。これには「さすがアルジェントは天才だな…」と唸るしかない。
漫☆画太郎の手法すら先取りしていたとは…。
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