「貪る。」 感想(ネタバレあり) この世は弱肉強食

概要

原題:Devoured

製作:2012年アメリカ

発売:プルーク

監督:グレッグ・オリヴァー

出演:マルタ・ミランス/カーラ・ジャクソン/ブルーノ・ジョイエッロ/タイラー・ホリンガー


ニューヨークの古いレストランで、従業員の女性が死体となって発見された。彼女は息子の手術代のため、エルサルバドルから出稼ぎにやってきたシングルマザーであった。彼女はオーナーやコックから辛く当たられたり、心ない客から売春を強要されるなど気苦労が絶えない中、レストランで幽霊を目撃するようになっていた。


予告編

感想


今月からゲオ先行でレンタル開始の新作ですが、製作は2012年とけっこう古めのホラー映画。

8年も放置されていたわりには面白かったです。

プルークさんはこういう埋もれた良作を発掘してくることが多くていいですね。



内容はもう悲惨に悲惨を塗り固めたようなツライ話で、難病を患った幼い息子の手術代を貯めるためにニューヨークのレストランへ出稼ぎに来ているシングルマザーのルルドが主人公です。何が悲惨かってオープニングでいきなり彼女が死んでるところを見せてしまってるというね。バッドエンドが確定しているストーリーを追うのもなかなかしんどいものがありますよ。



そんな気の毒な境遇にいたルルドがいかにして非業の死を遂げるに至ったのか? を語るのが本編というわけですが、そりゃあ出稼ぎ移民のシングルマザーが楽な生活をしていたはずもなく。レストランでコキ使われてはオーナーやコックにパワハラされ、客には売春を強要されるという想像以上に悲惨な生活を送っていた。それでもエルサルバドルで働くよりはマシなんでしょうかね。それにしてもやたら劣悪な労働環境ですが、アメリカもエルサルバドルからの移民はあまり歓迎していないだろうし。こういう境遇がリアルな出稼ぎ移民の暮らしなんだよということかもしれません。



しかもルルドはパワハラセクハラだけではなく、職場でたびたび幽霊を見るようになってしまう。古い建物だからそういうこともあるのか、それとも心労のあまり幻覚を見ているのか。あるいは出稼ぎ移民を苦しめる差別感情やら何やらのメタファーとしての幽霊なのか。そこら辺は曖昧なまま進みますが、それでも病気で苦しむ幼い息子のために歯を食いしばって働くルルドの姿はひたすら憐れみを誘います。これが最後には幽霊に殺されてしまうと思うと無常すぎてツライ。





以下ネタバレ





と思ったらあんなちゃぶ台返しをしかけて来ようとは…。

オープニングで見せたバッドエンドを超えるバッドエンドの追い打ち。

確かに伏線ぽい怪しい描写はいっぱいあったけども。

これ移民の人が見たら心底絶望するんじゃないですかね。

それとも逆にスカッとするかな。


タイトルのDevoured(貪る)というのは移民から搾取するアメリカ人という構図のことかと思わせておいて、実は逆だった。映画としては面白い仕掛けですが、せっかく出稼ぎ移民に対する同情を誘うような話だったのに真相がこれでは「やっぱり貧困出稼ぎ移民なんぞ絶対入れるべきじゃないわ」となりかねないのではないか。それとも「ああなったら困るし少しは優しくしようかな」と思うだろうか。でも心から優しかった男も一緒くたに殺処分してたからなあ。


まあ遠い外国のことだし別にどっちでもいいですけどね。

アメリカ人から搾取するのはいいがあんな短絡的なやり方でうまくいくはずもなく、「貧すれば鈍する」といった感じなのか。とはいえ息子は既に死亡していたので、あれは自暴自棄の八つ当たり、復讐に近い衝動的な行為だったのかなと思うと余計後味が悪いですね。鬱映画好きな人は要チェックではないかと思います。


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