「コスモボール/COSMOBALL」 感想(ネタバレあり) 惑星破壊弾を蹴り合う超次元サッカー

概要

原題:Vratar galaktiki

製作:2020年ロシア

発売:カルチュア・パブリッシャーズ

監督:ジャニック・フェイジエフ

出演:エフゲニー・ロマノフ/ヴィクトリヤ・アガラコヴァ/エフゲニー・ミロノフ/マリヤ・リソヴァヤ


2071年、月は崩壊し地球は荒廃していた。その日を生き延びることに精いっぱいの人類は、唯一の娯楽である「コスモボール」という超次元テレポートサッカーに熱中していた。貧しい青年のアントンはコスモボールが嫌いだったが、ある日自分にテレポート能力が備わっていることを知り、コスモボールの選手となる。しかし、コスモボールはただのスポーツではなかった。


予告編

感想





ロシア製のSFアクション超大作。ハイクオリティなCGが満載で尺が1時間58分もあり、相当なお金がかかってそうな雰囲気。私はこういう長い映画はスルーしがちなんですが、超大作のわりに設定やストーリーが何か変なので気になって借りてきました。



内容は、50年後の荒廃した地球で流行しているコスモボールというスポーツを軸に、宇宙破壊者チェルノとの戦いを描くというもの。やっぱり何か変な話ですね。



その「コスモボール」なるスポーツのルールとかはあまり説明されないのでよく分かりませんが、見た感じテレポートで空を飛びまわってなんかのエネルギー弾を蹴り合ってゴールに叩きこんでいるので、多分超能力サッカーのようなものかと思われます。



コスモボールは流行していると言っても普通の人がプレイできるものではなく、テレポート能力を持っているごく一部の限られた人しかやれない競技。で、ルール上は4人で1チームなのに地球人はたった3人しかテレポート能力者がおらず、惑星対抗銀河コスモボールトーナメント(?)で苦戦を強いられている。が、それでも何とか決勝までは勝ち進んでいるという状況。



で、モスクワで病気の母を抱えて貧しい暮らしをしている主人公アントン君が突如テレポート能力に目覚め、コスモボール選手としてスカウトされる。これで4人揃った地球人チームは決勝戦もいけるぜ!みたいな。優秀なテレポート能力を発揮しまくり、いきなりモテモテになるアントン君。二股がバレても特に嫌われたりしません。



ここまでは一見変なロシア映画のわりにツボを押さえたストーリー展開のようにも見えますが、決勝戦の相手が巨大なアマゾネス軍団という時点でやっぱりなんか変。惑星対抗らしいのでアマゾネス星みたいな星があることになるんだが。大体、地球人側も中世ファンタジーの雑兵みたいで罰ゲームとしか思えない異常にダサいコスチュームを着ているので、そんな奴らが空を飛びまわりながらエネルギー弾を蹴り合っている絵面がだいぶおかしい。



しかも、このアマゾネス軍団戦が主人公アントン君のデビュー戦だというのに、アントン君いきなりボイコットしてしまいます。目的がよく分からんが、何でだっけ? ともかく、この後はコスモボールの試合がもうないので、結局アントン君がコスモボールの試合で活躍するシーンも一切ないということに。まあ変に凝りすぎたSFでは非常によくある話ですが、どうしても肩透かし気味に感じます。



そもそもコスモボールとは何ぞやというと、実は宇宙破壊者チェルノが作り出した「電波弾」とかいう超強力な兵器を無効化するためにテレポーターに蹴らせていたとか何とか。実に回りくどい設定。何でそれをわざわざスポーツにしてたんですかね。「チェルノ」っていう敵の名前にも突っ込みたいけど、どうせなら「チェルノブ」にしてくれたらもっと面白かったのに。



クライマックスはそのチェルノとの戦いですが、ここでもアントン君はあまり戦ってないというか動物を手なずけただけのように見えてしまうのが気になる。いや、映像的には相当ド派手なクライマックスなので映画館で観てれば一応そこそこ満足感はあったんじゃないかと思うんですが。悪くはないんだけど、どうも宇宙の命運を賭けた熱いバトルのはずなのにあんまりそう見えなくて盛り上がりにくい。



というかあのピクサーのパクリっぽい白い獣は一体何者だったんですかね。何かを成し遂げたような空気を醸しつつ実は何もしてないモスクワ市民たちといい、何だかそれっぽい雰囲気だけで押し切られた感が拭えない。金はすごくかかってるし設定は凝ってるしで色々頑張ってるのが伝わってくるだけに何か惜しい映画でした。


コメント