「タイムトラベルZ」 感想 時をかけるジャンキー

概要

原題:Altered Hours

製作:2016年アメリカ

発売:アマゾンプライムビデオ

監督:ブルース・ウェンプル

出演:ライアン・ムンツェルト/ブリアナ・ポズナー/リック・モンゴメリー・Jr


不眠症でジャンキーのウィルは、売人のジョニーから「Z」という薬物を入手する。それを摂取して眠ると、向かいに住む少女が誘拐されるという非常にリアルな夢を見る。これがただの睡眠薬ではないと考えたウィルは、「Z」を作った料理人と会うことにするが…


予告編

感想




一日に禁断のアマプラ謎映画二度打ち。

とはいえ、これはそこそこ楽しめました。



ジャンキーのウィルが手に入れた「Z」という薬物を摂取すると、意識がタイムトリップして過去か未来の自分に憑依してしまう。数日後の未来に向かいに住む少女が誘拐され、自分が逮捕されることを知ってしまったウィルはそれを防ごうと奔走するが…という話。



SF映画ではありますが、低予算なのでそれっぽい特殊効果も舞台装置も何にもなし。そういうハンデがあってこその「薬物でタイムトリップ」という安いアイデアだったのかもしれませんが、これがなかなか悪くない。



ウィルは劇中で何度も何度も細切れに繰り返しタイムトリップするんですが、いつどこへ飛ぶのかは全くコントロールできず、過去へ行ったり未来へ行ったり。過去分はただ回想してるだけのようにも見えますけど。とにかく断片的に情報が与えられるので、ついていくのが結構大変です。ながら見してたらわけがわからなくなりそうですね。



しかし薬物でタイムトリップって一体どんな薬物だよ? って感じですが、そこで思い出したのが小林泰三のSFホラー小説「酔歩する男」です。あれは脳に時間の流れを感知する器官があって、それを破壊することで例えば1月1日の次の日が8月24日になったりと時間を正しく認識できなくなった男の話でしたが、本作もそれに通じるものがあるのではないかと思いました。



つまり「Z」とは時間の流れを感知する器官に働きかけるドラッグというわけですね。一度破壊したら元に戻れなくなった「酔歩する男」とは違って一回摂取で一回トリップするだけなのでこっちの方がだいぶ気楽ですね。しかしタイムトリップのためとはいえ、やたら薬物を摂取する描写が多いので教育上はあまりよろしくない映画かなと思います。



ウィルは妹と仲睦まじく幸せに暮らしていたことをよく思い出している(あるいは過去にトリップしている)んですが、その妹も普通にジャンキーなのであの清廉なイメージ映像はいかがなものか。まあジャンキーは傍から見てたら悲惨ですが、当人たちは幸せだろうからウィル視点では妹と一緒にトリップしていた日々は美しいものだったのかもしれませんが…



それはともかく向かいの少女が誘拐されるのを防ぐサスペンス展開の方はなかなか上手く組み立てられているなあと感心しました。あれだけ細切れにタイムトリップしてややこしい見せ方をしているわりには、意外な犯人、納得の行く動機、スリリングな見せ場、とサスペンスに求められる要素をしっかりまとめ上げていたんじゃないかと。



ただ、事件解決後にやたら時間が余ってるなと思ったらもう一山あったわけですが、さすがにそこはちょっと冗長に感じたかな。とはいえ本作はアマプラ謎映画の中では大当たりの部類だったと思います。劇伴もクオリティ高くて良かった。


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