「ザ・スイッチ」 感想 乙女走りする中年殺人鬼

概要

原題:Freaky

製作:2020年アメリカ

配給:東宝東和

監督:クリストファー・ランドン

出演:ヴィンス・ヴォーン/キャスリン・ニュートン/ケイティ・フィナーラン/セレステ・オコナー


学校でいじめられ気味の気弱な女子高生ミリーは、ある日狂暴な殺人鬼”ブッチャー”に襲われてしまう。だが奇妙な凶器で肩を刺された瞬間、ミリーとブッチャーの人格が入れ替わった。ミリーは殺人鬼の姿で警察に追われながらも元に戻るため自分の身体を探すが、残された時間は24時間もないのであった。


予告編

感想





「屈強な殺人鬼とか弱い女子高生の人格が入れ替わってしまう」という一発ネタ的なホラーコメディ映画。監督は「ハッピー・デス・デイ」の人ですが、あれと同じようなノリ。80~90年代のスラッシャー映画が大好きで、それを元に別のネタを組み合わせたりひねりを入れたりして自分の色を出してるって感じですね。



しっかし、市内で1か所しか上映してないっていうのに私以外の観客は二人しかいないという不入りっぷりにびっくり。こんな面白そうな映画なのにさあ。みんな一体何観てるんだろ。



まず、もろにジェイソン風味の殺人鬼”ブッチャー”がバカな若者を処刑していくオープニングのデキが非常に良いです。特に最初の殺人シーンには目を剥きました。ワインのビンを口から喉までねじ込んでパリーン! これは壮絶にイヤ~な死に様でインパクト大。そして壁に磔にした女子を見つめて首をかしげるマイケルパロディも忘れない。この監督、普通のスラッシャーホラーを撮っても充分いけるんじゃないでしょうか。



しかしこの監督はどうしても笑いを取りに行きたいタイプの人のようで、ブッチャーが謎アイテムの効果で女子高生のミリーと入れ替わってからはほぼほぼホラー要素はなくなってひたすら明るいコメディ調に。女子高生的な振る舞いをするいかついオッサン、という絵面はあざといながらもやっぱり笑ってしまいます。



ただ女子高生化したブッチャーの方は今までのノリで人を殺しまくってしまうと、元に戻った時にミリーが逮捕されてバッドエンドになってしまうのでは…という心配がありましたね。だからというわけでもないでしょうが、女子高生ブッチャーによるスラッシュシーンはかなり少なめ。力が弱いから思うように人を襲えないという理由付けはあったものの、そこは多少物足りないか。



とはいえイヤミな教師を電動ノコギリで真っ二つにするところは快哉を叫びたくなるいいシーンでした。あれだけ前振りされたらそりゃ派手な死にざまに期待したくもなりますからね。しかし、あの殺人だけはあとで調べられたらミリーの犯行だとバレやしないかと余計な心配をしてしまいました。まあそんな細かいことを気にする映画でもありませんでしたが。人格入れ替わりの謎アイテムもググったら一発で詳細が出てきてましたしね…



全体的に80~90年代ホラーへのリスペクトに満ちているし、テンポも良くクオリティも高くて面白いことは面白かったんですが、すごく若い感性で若い人向けに作られた映画だなあと強く感じましたね。なので、いつの間にか年を食ってしまった自分にはちょっと眩しすぎてどこか寂しい気分にもなってしまいました。

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