概要
原題:Koko-di Koko-da
製作:2020年スウェーデン・デンマーク
発売:キングレコード
監督:ヨハネス・ニーホルム
出演:ペーテル・ベッリ/レイフ・エードルンド・ヨハンソン/イルヴァ・ガロン
幼い愛娘を亡くし、悲しみに暮れ関係が冷え切った夫婦。3年後、彼らは少しでも仲を修復しようとキャンプに出掛けるが、3人組のサイコ野郎に襲われ殺されてしまう。しかし気づくと死ぬ直前に戻っていた。摩訶不思議な死のループに巻き込まれた夫婦は3人のサイコ野郎から逃げることができるのか…
予告編
感想
非常に不親切で抽象的、わけのわからない謎現象を好き勝手起こすだけ起こしておいてまるきり何の説明もない、いかにも北欧らしく寒々しいアート系のホラー(?)映画。
この手のアート系は基本的に苦手なんですが、本作は例外的にかなり楽しめました。内容が意味するところはあんまり分かりませんでしたが、理屈ではなく感性で味わうモードになっていたのが功を奏したようです。凡人がこの映画を考察しようとしてもおそらく無駄。
ちなみにキングレコードの「猫VS犬!」とか「今流行のタイムループホラーの決定版!」とかいうアホっぽい宣伝文句は決して真に受けないようにしてください。全くそんな内容ではないです。
幼い娘を亡くして関係が冷え切った夫婦がキャンプに行ったらサイコ殺人鬼3人組に襲われ、死んでも死んでもなぜか死ぬ直前に戻されるループ現象に陥る。
という話ですが、病院で娘の誕生日を祝おうとしたらもう死んでたっていう冒頭からかなり精神的につらく陰鬱な描写が続きます。超シリアスな映画です。彼らの悲しみを表現した影絵芝居が切ない。3年後、そこから何とか立ち直ろうと夫婦でキャンプへ行くトビアスとエリン。しかしエリンは全然行きたくなさそうだし、かなり険悪な関係になってしまっています。
それにしても夫婦仲を修復するために森でキャンプってのもどうなんですかね。全然有効な手段だとは思えないんですが。しかも別にキャンプ場とかでもなくその辺のひと気のないただの森だし。特に楽しんでいる様子も何もない。
寝ている間にエリンは小便がしたくなり、その辺の木の根元で用を足していると謎のサイコ殺人鬼3人組が!…ってところから死のループが始まります。サイコ殺人鬼トリオのリーダーはカーネル・サンダースみたいな白スーツにステッキの変態ジジイで、後は汚いデブと暗そうな女と猛犬。どいつも妙にキャラが濃いのですが、奴らの背後関係は一切明かされません。亡き娘が持っていたオルゴールに描かれていた人たちというだけ。
つまりこれは実際に殺人鬼に襲われてはループするSFホラーなどではなく、あくまで「一人娘を失った無間地獄で苛まれる悪夢的精神世界」を抽象的に表現しているのかなと思いました。まあ悪夢ならループでも何でもありですし。
ただ、内容はひたすら重たくて悲しいはずなのに映像的にはちょっと笑えてしまうのが何とも奇妙な味わい。ループのスタート地点で毎回エリンが尿意に耐えられなくなり用を足そうとするところから始まるので、必然的に毎回毎回パンツ丸出しで殺されるエリンが悲惨ではあるけどそれ以上に間が抜けていてコミカル。
しかもトビアスもブリーフ一丁で寝ているので、こいつも毎回毎回パンツ丸出しで色々試行錯誤しては殺されます。西洋人が大体パンツ一丁で寝てるのは知ってるけど、森でキャンプする時までパンツ一丁でいいもんですかね? 蚊とかブヨとかクモとかアリとかに刺されそうでものすごく嫌なんですが。
ループを繰り返すうちに、殺人鬼トリオが襲ってくる前に逃げなくては!とエリンを連れて車を走らせようとするトビアス。しかしループの記憶があるのはトビアスだけなので、エリンは「いいからその前にまず小便させろ」と毎回騒ぎます。ループ物なので観客から見てもエリンは常に尿意の塊のような厄介極まりない人物です。彼女の尿意を何とかせねば、死のループからは逃れられないのだ。
以下ネタバレ
しかし最終的には何とか逃げ切ることに成功します。
それを言葉で説明するのではなく、車の助手席でズボンを濡らしているエリンを映すことで観客に分からせる。内容も演出もかなりシリアスなんですが、この見せ方には正直笑いました。好き嫌いは相当割れそうな映画ですが、私はかなり好きですね。
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