「VS狂犬」 感想 私ってどんだけ不運なの

概要

原題:Cordes/Ropes/Prey

製作:2019年スペイン

発売:キングレコード

監督:ホセ・ルイス・モンテシノス

出演:パウラ・デル・リオ/ゲル・アンヘル・ジェネール/ジョルディ・アギラール


交通事故で四肢が麻痺してしまったエレナは、介護犬のアトスと一軒家で暮らすことに。しかし、到着して早々にアトスがコウモリに接触し、狂犬病に罹り狂暴化。エレナを執拗に狙い始める。そのうえ運悪く父親は心臓発作で倒れ、誰にも助けを求められない状況に陥ってしまう…


予告編

感想





昭和チックな邦題とジャケ絵がとても印象的なワンワンパニック。


これはもう嫌でもスティーヴン・キングの「クージョ」的なやつを期待してしまいますね。まあクージョはいくらなんでも昔すぎて細かいことは記憶には残ってませんが、とにかく狂犬と人間の息詰まる攻防が描かれているのではないかと思いレンタルしたわけですが。





しかしこれが限りなくヒューマンドラマに重きを置いた大人しい内容で、非常にお堅くマジメな作り。そういう目で見れば出来は悪くないものの、「VS狂犬」としては正直拍子抜けでした。一体誰なんだよこんな邦題付けたお調子者は?全くもう。売るためには仕方ないのかもしれんけどさあ…



主人公エレナは交通事故で妹を失い、そのうえ四肢が麻痺したことで人生を悲観して自殺未遂までやらかしている女の子。鼻ピアスは気になるが、設定は非常に重たい。そういう背景を考えるとある程度仕方ないとはいえ、これからお世話になる介護犬アトスに対してやたら冷たく当たるのであんまり好感が持てません。ペットのフェレットは大事にしてますしね。



そのアトスがコウモリを介して狂犬病に罹ってしまい、わずかに動く右腕と電動車椅子に頼るしかないエレナの運命やいかに…という話。ですが、さすがにこの設定ではあまり動きのあるパニックシーンもなく、地味にウロウロしているだけで狂犬アトスが襲ってくる場面も少なめ。この世の不運全てが降りかかってきたかのように感じ、生きる気力を失っているエレナの内省的な心理描写に尺の大半が費やされている印象。インパクトのある顔+鼻ピアス姿でずっとメソメソグチグチしており正直見るのがしんどかったです。もっと狂犬がガシガシ襲ってくるハイテンションなパニック映画を想像していたのに…



しかしアニマルパニック的に見どころが全くないわけでもない。途中助けに来てくれる知り合いのオッサンが狂犬アトスに襲われてしまうシーンはほぼ唯一に近い見せ場ではあるものの、非常に凡庸な見せ方。ここは残念。しかし、それよりアトスに噛まれて感染したフェレットの方がなかなか珍しくて良かったです。これまで色々なアニマルパニック映画を観てきましたが、フェレットに襲われる映画はさすがに観たことありませんでしたからね。狂犬ならぬ狂フェレットとの格闘は「ゾンビーバー」に匹敵する珍場面。これだけでも観た甲斐があったというものです。



ただ、フェレットとはいえ狂犬病に感染した動物に噛まれたんだからエレナも感染しちゃってあとで地獄を見るんじゃ…とそこが気になって仕方なかったですね。まあどっちみち後でアトスにも噛まれてましたが。狂犬病はヒトが発症するとほぼ助からない感染症ですからねえ。そう考えるとあのエンディングも希望を持っていいのかどうか分からなくて何だかモヤモヤが残ってしまいました。

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