「ダイナソー・ワールド」 感想 中国共産党に牙を抜かれたクソ映画監督

概要

原題:DINOSAUR WORLD

製作:2020年中国

発売:プライムウェーブ

監督:ライアン・ベルガルト

出演:シン・ユー/ツオ・イー/スティーヴン・ハ/マイケル・プ/サミュエル・ワン/ フォン・クバキ/トレイシー・ユー/エバン・アサンテ


仮想現実空間で恐竜が跋扈する中サバイブする最新VRゲーム”ダイナソー・ワールド”。抽選で選ばれた20名のプレイヤーが賞金500万元を賭けて戦うことに。病気の母の治療代と自分の学費を稼ぐため参加したエリックは、数学教師のイーサンと手を組み、優勝を狙うが…


予告編

感想




中国産の恐竜パニック(?)映画。


全く面白そうなジャケットには見えませんが、実はこれ「グレムリン2017」「ジュラシック・ユニバース」という妙に気合の入ったクソ映画を産み落とした前科実績を持つあの奇才ライアン・ベルガルト監督の新作クソ映画なんです。なので密かにかなり期待していました。今度はどんな奇っ怪なクソ映画を診せてくれるのか?



と思ったら、初っ端から前作「ジュラシック・ユニバース」の映像を使いまわしており、クソ映画マニアを興奮させてくれます。ちなみにその前作は死刑囚たちが恐竜と戦うVRゲームに参加させられ、最後の一人になるまで殺し合いをさせられる…という緊張感あふれる良クソ映画でした。本作は中国資本になってますが、どうやら今回も恐竜と戦うVRゲームが題材ということで地続きの世界観であるようです。



ところが、同じ恐竜VRゲームでも今回は死刑囚ではなく、ただの一般人やプロゲーマーが普通に参加する健全なゲーム大会。VR世界で殺されたとしてもただゲームオーバーになるだけであり、現実世界で死んじゃったりはしません。なので緊張感ゼロ。何これ? 当然血を見ることもほとんどできない。それじゃただの茶番ですよね。



なんでこんなぬる~い設定でクソ映画を作ろうと思ったのか理解に苦しみます。強烈な刺激臭、腐敗臭を放ってこそ輝くのがクソ映画というモノなのにそれがない。中国資本に牙を抜かれたライアン・ベルガルトなんて見たくなかったよ。今までコンビを組んでたアダム・ハンプトンも出演してませんしね。



恐竜がうろつくVR世界で一定時間生き残れば勝ち、というルールなので当然他のプレイヤーを蹴落とす戦略が有効なわけですが、それを実践するプロゲーマーたちが完全に悪役になっているのが何か変。優勝賞金500万元でそれをやらない方がどうかしてますよ。ゲームの中で綺麗事を言っても意味ないんだから。



逆に弱い女子供やピンチに陥っている人を助けるプレイヤーたちが主役・善玉扱いだけど、彼らは一体何のためにこのゲーム大会に参加してるんですかね。これが「ユニバース」のように本当に命を懸けた殺し合いなら助け合うのも分かるけど、そうじゃなく単なるゲームなんだからさ。子供を撃ち殺したプロゲーマーを本気で怨敵扱いして「絶対に仇を取ってやる!!」って悲壮な顔するのも何か違うと思うよ。この辺は中国共産党の薄っぺらい道徳教育観を強制されているようで実にシラケます。やられた子供も別に悔しがるでもなく「このゲームよく出来てるなあ」って感心してたし。いい大人がゲームと現実を混同してはいけませんね。



そんな感じで人間同士の争いがメインなので、恐竜の存在感はかなり希薄です。ラプトルなんて華奢な女の子のパンチで倒せてしまうくらいのザコ扱い。ボス格のティラノは何を出し惜しんでいるのか出番がほとんどありません。別に今更ティラノに大した有難みもないからいいけど。それよりワニに喰われるシーンがあったのが唯一の収穫かな。



結局のところ、何から何までジャリ向けか?ってぐらい健全で幼稚な茶番なので、いい大人が楽しめるようなクソ映画ではありませんでした。「健全なクソ」ほど矛盾した存在もない。中国ってなんでこうも創作物に対する検閲が異常に厳しいんですかね。「共産党は仏よりも上にあるのさ」などと思い驕り高ぶっているのか。あのライアン・ベルガルト監督にこんな腑抜けたクソ映画を作らせるなんて信じがたい弾圧、文化大革命に匹敵する蛮行ですよ。



とはいえライアン・ベルガルト監督もこのやっつけ仕事でそれなりのチャイナマネーを手にしたはずですから、次回作は本国アメリカに戻って再度アダム・ハンプトンとタッグを組み、また気合の入ったクソ映画を作ってくれることを祈っておくとします。「グレムリン2021」とかでいいよ。




追記



そういやこの監督「ジュラシック・ユニバース」の後に「ジュラシック・ベイビー」なんて露骨なジャリ向け映画撮ってたか…。印象が薄すぎて忘れてた。彼はもうシリアスなクソ映画を撮る気はないのかもしれませんね。


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