「ヴァーチャル・ウォー」 感想 死者に人権なし

概要

原題:Tur

製作:2019年ラトビア

発売:チャンスイン

監督:ウルディス・シプスツ

出演:イルバ・センテレ/レニャールズ・ヴァイヴァーズ/アルトゥールス・スクラスティンス/イナラ・スラッカ/カーリス・カスキス


IT企業でバーチャルリアリティのプログラムを開発していたエンジニアのグンデガ。完成のためには恋人ライモンズの私物PCが必要不可欠だったが、なかなか貸してもらえない。だが、ある時ライモンズが事故死してしまう。悲嘆に暮れるグンデガは遺品のPCを使い、バーチャルリアリティ上にライモンズの人格を再現し、それにのめり込んでいくが…


予告編

感想




ラトビア産の恋愛映画。

いや、てっきりSFアクションなのかと思って借りてきたんですが、実態は限りなく女々しい恋愛映画でした。あいにく私は他人の恋愛を楽しむような感性を持ち合わせていないので、大変眠たい84分となってしまいました。ジャケ詐欺には慣れてるけど、こういうのは勘弁してほしいもんですな。と思ったら、ジャケットの下の方に小さく


「ヴァーチャルか現実の世界…どちらで生きていくか究極の選択を迫られるSFアクション・ラブストーリー」


って書いてありやがりました。そこまで細かくチェックしないっつうの。



主人公グンデガは会社の仕事でヴァーチャルリアリティのアプリを作っており、上司に完成を急かされているが、あとは恋人ライモンズのPCさえ貸してもらえれば試作モデルをプレゼンできるのに…という状況。



別にどうでもいいんですけど、なんで仕事で作ってるプログラムの完成に部外者である恋人の、それも私物PCをアテにするのか。ライモンズはPCのヘビーユーザーらしく、なんかそこに詰まってる個人情報を活用すればライモンズの人格をヴァーチャルリアリティに完璧に再現することが出来るのよ!!…とのことなんですが、誰だってそんなもん差し出したくないでしょう。製品化されるとなればなおさらイヤですよ。グンデガは頑なにPCを差し出さないライモンズに対して「パソコンに隠し事でもあるの? どうして貸してくれないの?」などと問い詰め浮気を疑っていましたが、やましい事があろうがなかろうがプライベート情報のかたまりである個人PCを貸してもらえて当然と考える思考回路が分かりません。



しかしライモンズは交通事故死してしまい、結局PCはグンデガの手に渡ってしまいます。なんという悪質な人権侵害なのか。死者に拒否権はないのか。私も不慮の事故で死んだらパソコンが自動的に爆発するような仕掛けをセットしておきたいところです。



そうして完成したバーチャル人格の試作モデルとしてライモンズの人格を再現したところ、想像以上にリアルだったことでグンデガは寝食を忘れて亡き恋人とイチャイチャすることにのめり込んでいき、上司とプログラムの奪い合いに…みたいな展開。仮にも仕事で作ったモノなのに会社に渡さず独占しようとする自己中なグンデガと、悪役みたいに扱われる上司にちょっとイラっとします。



全体的にどうでもいいんですが、せっかく何でもアリのVR空間でイチャつけるはずなのに、なぜかいつも背景が寂しい廃墟なのが貧乏くさくていけません。しかも急にマトリックス風の時代遅れなコスプレをしてスタイリッシュに格好つけた銃撃戦が始まったりするんですが、何と戦っているのか分からんし。何となくそれっぽいことをやりたかっただけにしか見えないのがいただけない。そのシーンのおかげでこんな詐欺的邦題を付けられたようなもんですし。普通に恋愛映画として売ってくれればいいものを。まあ死んだ恋人に執着する未練がましい恋愛映画として見れば出来はそれなりかなとは思います。


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