「ディープ・コンタクト」 感想 衰退する旧炭鉱町の苦しみ

概要

原題:The Devil Below/Shookum Hills

製作:2021年アメリカ

発売:アットエンタテイメント

監督:ブラッド・パーカー

出演:アリシア・サンス/エイダン・カント/ウィル・パットン/ザック・エイヴァリー


地質の科学調査のため、シュックムヒルズの炭鉱町を訪れたアリアンたち。そこではかつて史上最悪の炭鉱火災が発生し、大勢の人が亡くなっていた。なぜか地元住民が追い払おうと嫌がらせをしてくる中、何とか炭鉱にたどり着いたアリアンたちだったが、仲間の一人が突然炭鉱の中に引きずり込まれてしまう。


予告編

感想




旧炭鉱を訪れた科学調査チームを謎の地底人(この映画では「異人類」)が襲い食らう。これは完全に「ディセント」の劣化版でした。しかしこの2つは、誰にでも分かりやすくサメ映画で例えると「ディープ・ブルー」「ディープブルー・ライジング」くらいクオリティに差があります。



私は「ディセント」を深く愛している人間なので、劣化版とはいえ本作もそれなりに楽しめました。洞窟で異人類に襲われて餌場に連れていかれ、順番に踊り食いされていく…というシチュエーションはやはりモンスター映画マニア的には非常に美味しい。欲を言えば、それまでに喰われた獲物の残骸、骨などが散乱していればなお良かった。こういうシーンでは絶望感と嫌悪感をこれでもかと強調してほしい。



本作を観た人は誰でも思うことでしょうが、とにかく異人類の姿を出し惜しみしすぎているのはいただけない。ボケたりブレたりで全然まともに画面に映らないんですよね。低予算でショボイ造形の着ぐるみだから見せられないよ!…という気持ちも分かるんですが、正直もう手ブレやピンボケで誤魔化していい時代は終わったと思うんですよ。作り手はそれもテクニックだと考えているんでしょうけど、そういう小賢しさはただ鬱陶しいだけ。低予算ホラーはもう開き直ってショボさを見せつけるべきなんです。マーク・ポロニアほどあけっぴろげにやれとは言いませんが、例えば「アイス・トレマーズ」程度にはさらけ出しても良いでしょう。どうでもいいけどジャケ絵が本作とよく似てますね。どっちもこんなモンスター影も形も出てきませんが。




本作のシュックムヒルズのような衰退する炭鉱町って何か惹かれるものがあるんですよね。アメリカだとペンシルベニアにセントラリアっていう旧炭鉱があって、1962年に発生した火災が元で住民が去りゴーストタウンと化したそうなんですが、50年近く経った今でもまだ燃え続けているとか。実に興味深いしぜひ観光してみたいところですが、そこに立ち入ると重傷か死亡の恐れがあるとのことで、現実には無理っぽいですね。



まあわざわざアメリカまで行かなくても、私の地元北海道も旧炭鉱跡には全く不自由しない土地柄ではあります。夕張、三笠、芦別、赤平等々は私の好きなドライブコースです。特に夕張はあまりのゴーストタウンっぷりに感動すらしますよ。若い政治家には踏み台にされ、旧炭鉱からは毒ガスが吹き出し、住宅街には毒の沼地が発生し、そこかしこに白骨死体が散乱し、町の中心部にも墓が作られ、病人も多数と悲惨な状況になっている…ということはありませんが、まあそれに近い退廃的な雰囲気はあるかなと。



著しく脱線した文章を書いてて気が付いたんですが、本作の異人類って別に町の住民ががんばって封鎖して管理しなくても、アメリカ軍に頼めば普通に殲滅できそうなやつらなんですよね。どうしてそんな当たり前の選択肢が取れないのか。実は、本作の異人類は衰退する旧炭鉱町の経済的な苦しみを表現したメタファーだったとは考えられないでしょうか。科学調査に訪れたアリアンたちが襲われるのも、ただ調査するだけじゃなくしっかり金を落としていけよ!ってんで締め上げられ吸い上げられたというわけですね。んなわけないか。


コメント