概要
原題:Oxygène
製作:2021年アメリカ・フランス
配信:ネットフリックス
監督:アレクサンドル・アジャ
出演:メラニー・ロラン/マチュー・アマルリック/マリック・ジディ
完全に記憶を失った状態で、極低温ポッドの中で目覚めたリズ。
生き延びるには、酸素が枯渇してしまう前に、自分が何者なのかを思い出すしかない。
(↑ネットフリックスHPより)
予告編
感想
ネットフリックス独占配信のアレクサンドル・アジャ監督最新作。
この監督は「ハイテンション」「ヒルズ・ハブ・アイズ」「ピラニア3D」「クロール 狂暴領域」と傑作製造機と言っても過言ではないくらいの凄腕なので大いに期待して鑑賞。
…が、これは不覚にも途中で寝てしまいました。
アジャ節がかなり抑えられていて上品すぎるのが原因かな。
記憶を失った状態で極低温ポッドの中で目覚め、酸素は残りわずか。そこからどうやって脱出するか、自分が何者なのかを探っていくワンシチュエーションスリラー。基本狭苦しいポッドの中でリズという女性が一人芝居しているだけなので、あまりお金はかかっていなさそうです。話し相手はポッドに搭載されたポンコツAIに加えて外部と音声通信も可能なので、物理的閉塞感はあってもそれほど孤独感はありません。
リズは一般人ではなく科学者か医者っぽい知的な人物のように見えたので極限状況で最初は混乱してもそのうち冷静に対処するだろう…と思いきや、普通にずっとパニクりまくりでギャアギャアわめくわ人の話を聞かないわでかなりイラつきました。パニクったら余計酸素が減るんだから大人しくしとれと言いたくなる。外部とやり取りするにせよ、相手の言うことが気に入らないと「聞きたくない!切って!」「拒否して!」とえらく短絡的な対応をしているように見えます。助けを求めている立場なのになんでそんな偉そうなのかと思えるところも多々ある。
リズがそんなんなのでポンコツAIのミロは事あるごとに鎮静剤注射をぶち込もうとしてきます。ちょっとしつこいけどまあ妥当な判断ですね。ところがここが唯一アジャ節が滲み出ている楽しい見どころになっていて、シャカシャカと気持ち悪い動きで迫ってくる触手ロボアーム注射器が異常に禍々しいんです。ポッドの開発者はなんでそんな無駄に生理的嫌悪感を煽るデザインにしたし。これには一度は鎮静剤投与に同意したリズも必死に抵抗。やろうとしていることはただの鎮静剤投与なのにこの「刺されたら無惨に殺される!」感は何なのか。こんなどうでもいいところでホラー的な見せ場を作ってしまうアジャ監督はやはり只者ではありません。それにしても残り少ない酸素が無駄に消費される一方ですが。
中盤以降明かされる真実にはそれなりに意外性もあって眠気も収まりましたが、結局のところリズがポッドの中で残り少ない酸素に焦ったり、触手ロボアームに抵抗したり、管を抜いたり刺したり…とすったもんだした意味があまりなかったように思えてならない。トラブルで目が覚めてしまったからああいう騒ぎになったのは分かるけど、そのまま寝ていても結末には大した影響がなかったんじゃないのかと。アジャ監督にはチマチマしたSFよりやっぱり豪快なスプラッターかアニマルパニックを撮って頂きたいなと思いました。
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