概要
原題:The Bad Twin
製作:2016年アメリカ
配信:アマゾンプライムビデオ
監督:ジョン・マーロウスキー
出演:ヘイリー・ダフ/グレイス・ヴァン・ディーン/スコット・ベイリー
ドクター・ジェンはラジオ番組の人気パーソナリティ。だが、精神を病んだ姉キャシーが放送中も放送後もガミガミ難癖を付けて突撃してくる。ジェンはやむを得ずキャシーを精神病院にぶち込んだが、彼女には双子の娘がいた。キャシーの入院中、双子を預かることにしたジェンだったが、次々と良くないことが起こり…
予告編(ではない)
予告編なぞありゃしないので適当なグレイス・ヴァン・ディーンの動画でも貼っときます。
感想
クセが強くて当たり外れが激しいジョン・マーロウスキー監督の新作テレビ映画。
本作を観てようやく気づきました。この監督はとんでもなくぶっとんだキチガイを魅せるのが好きなんだなと。「ザ・テスト 護身術」はえらく独創的な狂い方をしているサイコ野郎がとても面白かったわけだし、他の作品も大概アタマのおかしな人が暴れているものばかりです。
本作の主人公はラジオパーソナリティをやっているドクター・ジェン。やはりというか非常に裕福な白人女性で、いったい何千万ドルするのか見当もつかないほど超巨大な豪邸にたった一人で暮らしています。あれは空間の無駄遣いにもほどがある。あそこまでデカイ家だとお手伝いさんを何人も雇わないと維持管理しきれなくて面倒だと思うんですが。でかいプールもあれば車庫だって3つも4つもあるし、いくらカネが有り余っているのだとしても理解不能な暮らしぶりです。
そんなウルトラセレブにつっかかってくる今回のサイコ・オバサンは、ジェンの実姉であるキャシー。彼女はラジオ放送中に電話をかけてきては罵詈雑言を吐き散らすわ、放送が終わったら放送局に乗り込んできて凄まじい勢いで喚き散らしながら掴みかかってくるわとオープニングから恐ろしいほどのキチガイ地獄。あんなエネルギッシュにキレまくるサイコおばさんなぞ初めて見ました。さすがジョン・マーロウスキーの仕事だと唸らざるを得ない。
これにはジェンもたまらず、即刻キャシーを精神病院にぶち込みます。しかしキャシーには双子の娘オリビアとクインがいました。ジェンは彼女たちを引き取って保護するが、やはり彼女たちにもとんでもないサイコな素質があり、さらにキャシーからも恐ろしい遠隔電波指令が…という超絶サイコ展開。
双子役はアマプラによればネクストブレイク必至の大注目女優だとか。なんとあのキャスパー・ヴァン・ディーンの娘とのこと。「シャークアタック」とか「シャークトパスVS狼鯨」でサメと戦っていた親父の雄姿を観て育ったんだろうし、今後の活躍に期待が持てますね。
このバッドな双子があれこれ嫌がらせを仕掛けてきたり、都合の悪い人物を消したりしていく様子はかなりツッコミどころ満載で、「いやいや絶対そうはならんだろ…」とつぶやきたくなるシーンまみれです。前々から思ってたけどマーロウスキー監督は色々と粗雑で細かいことを気にしなさすぎではありませんかね。特にビーチでの殺人はあまりにもテキトー。あんな浅い埋め方で出られないわけがないし、潮が満ちるのも異常に早すぎて明らかにおかしい。他にいくらでもマシな殺し方があるだろうよ…
以下ネタバレあり
そんな感じで単なるクサレポンコツサイコスリラーなのかと思いきや、楽しめる部分もちゃんとある。キャシーはなぜあんなにも信じがたい暴走サイコおばさんになったのかと疑問に思っていたら、彼女の母親もサイコだったという過去が語られます。遺伝なのか、それとも洗脳なのか。そしてキャシーのバッドな双子オリビアとクインも同じようにサイコな娘たちなのかと思いきや、実は……という展開はキチガイ螺旋地獄の業の深さを感じられて良いです。
また、キャシー自身も「実はキチガイのふりをしているけど、裏ではクレバーな策謀を巡らしている賢い女なのよ」みたいな素振りを見せるところがあり、私もうっかり騙されかけましたが、やっぱりただのアホ全開なキチガイだったというひっかけはなかなかでした。
ジェンはこの手のテレビ映画でもマーロウスキー作品でもよくありがちな「疑うことを知らない、嫌味なほど心が清い善人」なので、そんなサイコで悪辣な母娘たちと一緒にドライブに出かけてしまいます。そんなのもはや無防備を通り越してただの自殺です。すると案の定、運転中にキャシーのミラクルサイコトラップ「ハチの群れを箱から出してサプラ~イズv!」が発動し、これをまともに喰らってしまう。喰らうっていうかただの自爆に等しい愚蛮行だけども。良くも悪くもこの場面のインパクトは相当なものがありますよ。キャシーが超絶キチガイサイコなのはもう充分わかったけど、にしてもこんなキャラクターを思う存分暴れさせられるマーロウスキー監督も頭のネジがかなり緩んでいるのではないか。
…だが、それがいい。
とはいえ、ここまでやっても「ザ・テスト 護身術」のぶっとび具合には及んでいないんですがね。つくづくあの作品は凄すぎた。それでも、本作もまた私の脳にそれなりに深い爪痕を刻んだ作品でした。
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