概要
原題:Wrong Turn
製作:2021年アメリカ・カナダ・ドイツ
配給:AMGエンタテイメント
監督:マイク・P・ネルソン
出演: シャルロッテ・ベガ/マシュー・モディーン/アダン・ブラッドリー/エマ・デュモン/ディラン・マクティー/デイジー・ヘッド/ヴァーダーン・アローラ/エイドリアン・ファベラ
ジェンと5人の友人たちはアパラチア山脈の自然歩道へハイキングに訪れる。雄大な自然を満喫するジェンたちだったが、登山道から外れたところにある南北戦争時代の遺跡を探そうと危険な森の奥へ入りすぎてしまう。彼らが引き返すかどうかで揉め始めた時、頭上から巨大な倒木が転げ落ちてくる。それを皮切りに、悪意ある何者かの気配が漂い始める…
予告編
感想
2003年の同名作品のリブート版。
このシリーズは結構人気で6作ぐらいは出ているはずですが、私はその1作目の「クライモリ」とパチモンの「新クライモリ デッドフィーバー」の2つしか観ていません。パチモンはカウントしなくてもいいか。オリジナル版はもう細かいことはほとんど覚えてないんですが、アパラチア山脈を訪れた若者グループがそこに巣食う奇形の食人鬼一族に襲われて喰われる話で、フツーによくできたごくフツーのホラーという印象でした。その3年後に公開された「ヒルズ・ハブ・アイズ」が同じようなネタでよりクオリティが高い上位互換的な内容だったので、私の中では「クライモリ」の存在感が薄れてしまったんですよね。
あれだけ二番煎じ三番煎じ四番煎じと再利用されまくって完全に出涸らしとなったはずの「田舎に遊びに来た若者グループが食人鬼に襲われる」ネタをわざわざ現代に復活させた意義とは一体何なのか。我が田舎町でも1週間限定とはいえ上映してくれる奇特な映画館があったので鑑賞してきました。しかし客入ってなかったなあ…。
…で、本作もまたアパラチア山脈に遊びにやってきた若者グループがそこに巣食う何者かに襲われるという話。オリジナルと一見同じようでいて、しかし驚くほど全く異なる内容。
既存のホラーから拡張に拡張を試みて深掘りした長尺(109分)の作品で、クオリティはものすごく高い。オリジナル版より断然面白いんじゃないか。力作です。
しかしあまりにも盛り沢山すぎて
「そこまでやるのか」
「え、そこまでやるの?」
「ま…まだやるの!? っていうかいつ終わるのこれ!?」
と胸やけするほど濃厚ニンニクアブラマシマシ的な超ボリュームでした。面白いけどさすがにちょっとくどさも感じた。それにしてもこりゃオリジナルとは全然別物すぎて、もう別のタイトルでもいいんじゃないかなと思いましたね。
主役のジェンを始めとする若者グループは非常に現代的というか進歩的なメンバーばかり。意識の高い環境活動家、白人女性と黒人男性のカップル、同性愛者カップル等々いかにも「ザ・ポリコレ」って感じの都会者たちです。しかし単に時勢に合わせてなんとなく配慮したとかそういう消極的な発想ではなく、そういう人物だからこその行動や決断などが随所に見られます。そうすることで、昔とおんなじようなことやっていてもけっこう違う展開になるもんだなと。
しかも、驚くべきことに襲撃者の正体が「奇形の食人鬼たち」ではない。なんというサプライズか。でもそれを捨ててしまうと結局「クライモリ」のアイデンティティって一体何なの?? って思われかねない諸刃の剣でもありますよ。暗い森が舞台ならなんでもええんかと突っ込みたくはなる(原題は全然違うけど)
まあしかし私は別にオリジナル版に思い入れはないし、面白ければ何でもいいのでこれはこれで充分アリです。思ったほどエグさはありませんでしたが、人里離れた森の中で得体の知れない奴らに襲撃される恐怖と緊張感は充分みなぎっています。そいつらの正体の意外性と理不尽さ、それに対する若者たちの対応は確かに現代の最新型。手垢のこびりつた田舎ホラーも価値観を「アップデート」するとこうなるのか~という驚きと新鮮味があり実に楽しめました。
以下、ちょっとだけネタバレ
しかし「田舎はクソ!」「田舎者はマジでクソ!!」と言わんばかりの昔と変わらないステレオタイプな田舎クソ描写が多々あり、いくら田舎ホラーでもこれは偏見を助長するし、自由と多様性を尊重しようと叫ぶ現代においてそれはないんじゃないかなーと少しゲンナリはしてました。
…かと思わせてからの「田舎者たちも実は善人で味方だった」展開は非常に良かった。良かったんですが、知ってるならあんな回りくどい警告してないでちゃんと教えてやればいいのにとか、オヤジがカネで雇ったハンターはやたら自信ありげなクセにあっさりやられすぎだろとか微妙にツッコミどころが発生し若干の無理も感じました。
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