概要
原題：Anything For Jackson
製作：2020年カナダ
発売：プルーク
監督：ジャスティン・G・ダイク
出演：シーラ・マッカーシー/ジュリアン・リッチングス/コンスタンティナ・マンテロス/ジョシュ・クルッダス/ヤニック・ビッソン
老夫婦のオードリーとヘンリーは妊婦を自宅に拉致監禁する。彼らは事故で死んだ孫ジャクソンを復活させるため、悪魔の力を借りて孫の魂を胎児に注入しようとしていた。だが儀式の結果、冥界の門を開く悪魔サガットが召喚され、老夫婦は恐ろしい怪異に遭遇する。
予告編
感想
「死霊館 悪魔のせいなら、無罪。」
「悪魔館 死霊のせいなら、有罪。」
かつてこんなにも紛らわしいパチモンがあっただろうか。邦題もジャケットデザインもタイトルフォントも何もかもだよ。上に載せた死霊館の方はセル版ですが、レンタル版は煽り文句の入れ方まで似てます。これはひよこ鑑定士でも間違えてしまう危険性がある。
「死霊館 悪魔のせいなら、無罪。」なんてふざけた邦題が出た時点で、ワーナーさんご乱心だな…「元カレツイラク」の悪影響かな…とか思ってたけど、プルークさんのやらかしっぷりはその比じゃなかった。アルバトロスも真っ青な擬態に錯誤不可避。プルークさんはパチモン出し始めたのが多分わりと最近なので、逆に超えちゃいけないラインを分かってないような気がしないでもない。
ただ、幸か不幸か本作はかなり面白いです。これなら間違って借りた人がそんなに怒ることもありますまい。というかパチモンだと気が付かないかもしれません。いやもう、むしろオリジナルより面白い可能性すらある。こんな出来のいい映画をパチモン仕立てにしちゃうってどうなの？ 本物のカニよりうまいカニカマみたいなもん？ 形はどうあれ国内版出してくれただけでも感謝すべきなんですかね。
内容は、死んだ孫をサガットなる悪魔の力で生き返らせようとする老夫婦の話。ググってもﾀｲｶﾞｰｱﾊﾟｶｯの人しか出てこないけど本作オリジナルの悪魔なのかな。それはともかく老夫婦は悪魔崇拝者で、たまたま出会った妊婦を拉致監禁してその胎児を依り代に使おうとする。なのでさぞかし邪悪なジジババなんだろうなと思うわけですが、案外そうでもない。やってることは間違ってるとはいえ、悪魔にすがりたくなる気持ちも充分わかる気の毒な人たちです。しかし悪魔ですからそんな老夫婦を幸せな結末に導いてくれるはずもなく、様々な悪霊が老夫婦の前に現れるようになってしまう。こいつらのインパクトが相当強烈です。
まず、デンタルフロスで歯間の掃除をしまくりながら近づいてくるデンタルフロスババアがとてもキモい。本当にただデンタルフロスをシャカシャカして歯をポロポロ落としてるだけで実害は全くないけど、だからこそ怖いよ。子供に見せたらトラウマになるかもしれません。並のホラーセンスではなかなかこんなユニークな悪霊をクリエイトできるもんじゃないですよ。
どこからともなく現れてむしゃぶりついてくるスパイダーウォークマンも実に気色悪くて最高です。隙あらばとにかく自殺するところを繰り返し見せつけてくる刑事の霊などもしつこすぎて笑えてきます。
そんな個性あふれる悪霊が次々と現れる中、いまいち要領よく立ち回れない老夫婦。孫を復活させようにも邪魔ばかり入って行き詰ってしまったので、不気味な悪魔崇拝者イアンを頼ることに。が、コイツも一見底なしの闇を抱えたシリアスなベテラン悪魔崇拝者のようなツラ構えのくせに、自宅に帰ると「ご飯よー（母親）」「いらないって言ってるだろ！」などと子供部屋おじさん丸出しな会話を繰り広げたりして笑いを誘います。
…なんかこうして書くとホラーコメディのようですが、実際は喪失感に苛まれる老夫婦の悲しい願いを切なく描いた情緒あふれるしっとり系ホラーとして実に秀逸な出来だと思いましたので、レンタルショップでもし「死霊館」と区別が付かなくて困ったらいっそ両方借りてみるのもよろしいのではないでしょうか。
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