「マークスマン」 感想 狙う!!撃つ!!!仕留める!!!!

概要

原題:The Marksman

製作:2021年アメリカ

配給:キノフィルムズ

監督:ロバート・ロレンツ

出演:リーアム・ニーソン/キャサリン・ウィニック/フアン・パブロ・ラバ/テレサ・ルイズ


牧場主のジムは妻に先立たれ、牧場も住む家も借金のために失いつつあり人生に絶望していた。そんなある日、メキシコの麻薬カルテルから逃げてきた母子と遭遇する。銃撃戦の末、致命傷を負った母親から幼い息子を託されたジムは彼をシカゴにいる親類の元まで送り届けようとするが、冷酷無比なカルテルが執拗に追ってくるのだった。


予告編

感想



リーアム・ニーソンが見知らぬ少年を守るためメキシコの麻薬カルテルと戦う。メキシコ麻薬カルテルといえばそいつらに誘拐された姪を取り戻すために戦う「ランボー ラスト・ブラッド」はまるでランボー版「96時間」のような内容でしたが、今度はリーアム・ニーソンがベトナム帰還兵だったりするので、どこかニーソン版ランボーのような趣きを感じなくもない。

宣伝では



的中率100%の男

敵は、凶悪麻薬カルテル

狙う!撃つ!!仕留める!!!



と大変バカっぽいというかテレ東みたいな確信犯的煽り文句が踊っています。予告編のナレーションも木曜洋画劇場でお馴染みの声だしな。しかし実際はアクションは限りなく控えめで、お互いに喪失感を抱えた老人と少年の心の交流的なやつを繊細に描いたシリアスなヒューマンドラマでした。



まあ、「狙う!撃つ!!仕留める!!!」的な単細胞で頭悪い午後ローチックな激しいドンパチを期待していた身からすると相当な肩透かしでしたが、これはこれですごくしんみりした良い映画だとは思いましたよ。人生に絶望していた老人が凶悪組織に追われている少年を助けることによって、己の死に場所を見つける。作中でクリント・イーストウッドの映画を観てるシーンがあったけど、本作自体も何か「グラン・トリノ」とかそういう系と似た匂いを感じます。新作「クライ・マッチョ」の予告編も入ってたけどこれも同系統っぽかったなあ。それだけに新鮮味はありませんが、ラストの余韻は心地良い。



あとは細かいところについていくつか。主人公ジムはアリゾナの牧場で少年ミゲルと出会い、彼をシカゴまで連れていくわけですが、ほぼアメリカ縦断と言っていいくらいの距離感。グーグルマップで経路を調べてみたところ、2800kmぐらいあり車だと25時間以上かかるようです。日本人には想像もつかないスケールの逃避行ですなあ。しかし、たかが子供一人のためにそんな長距離を執拗に追ってくるカルテルは一体どんだけ暇なんだと思わなくもない。


そんなのそもそも追跡不可能なのでは? という気もするんですが、ジムがガソスタやレストランでクレジットカードを使うとたちどころにその情報をキャッチするカルテル。こやつら一体どんな凄腕のスーパーハッカーなのか。いつのまにジムのクレカ情報が抜かれていたのか。それともカルテルの情報網はクレカ会社にすら及んでいるのか。それに気づいたジムが現金払いに切り替えるといよいよ追跡不可能かと思われましたが、ミゲルがご親切に印をつけた地図を落っことしてそれをカルテルに拾われるっていう。君、わざとやってます?



それはそれとして私が印象に残ったのは旅の途中で立ち寄ったガンショップでのやり取りです。経歴を照会するために1日待てという店主に、何とか今すぐ売ってくれと頼むジム。経歴照会は法律で決まっていることのようなので見逃してはいけないんでしょうが、ジムがベトナム帰還兵であり、店主の兄がベトナムで戦死していたことから仲間意識を感じたのか銃を渡してしまう。このシーンはちょっと都合が良すぎるし、私も別にベトナム戦争に行った身内がいるわけでも何でもないけど、なんか「わかる」と言ってしまいそうになります。哀愁漂わせたベトナム帰還兵が悪党に追われてたらそりゃあ法律を破ろうとも優しくしてあげたくもなりますよ。





↑それにしても、リーアム・ニーソン映画であること以外何一つわからないこの本国版DVDのジャケットデザインは少しやっつけすぎではないか。96時間と同じに見えるから困る。



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