「エクストロ」　感想　気持ち悪さの引き出しが多彩な怪珍作

概要

原題：XTRO

製作：1982年イギリス

発売：スティングレイ

監督：ハリー・ブロムリー・ダヴェンポート

出演：フィリップ・セイヤー/バーニス・ステジャース/マリアム・ダボ/ダニー・ブレイニン/サイモン・ナッシュ

山荘で遊んでいた父親サムと息子トニーの頭上から、謎の光が襲ってくる。サムはその場で失踪し、トニーはたびたび悪夢を見るようになってしまう。それから3年後、墜落した何かから現れたエイリアンが近所の女性に何かを産み付け、サムの姿となって出産される。新生サムはトニーの家を訪れるが、妻レイチェルは既に新しい恋人と暮らしていた…

予告編

感想

約40年前のイギリス映画。

かなりレアでカルトな珍品だったようですが、今ではアマプラなどで配信しているので気軽に目撃することができます。しかもえらい高画質。便利な世の中になったものです。

「ずっと変な映画を観て過ごしている」と仰られている方が「これは…！」と思ってオススメしてくれるほど変な映画、ということでそれなりに構えて観てしまいましたが、こいつは想像以上にいかれた映画でした。

エイリアンにアブダクションされたサムが3年の時を経て超グロテスクなエイリアンと化して帰還。一体サムに何があったのか。しかもその辺の女性に寄生して、元の姿になって改めて出産される…という導入は映像的にはおったまげるほど悪趣味ではあるものの、全然理解できる内容です。ここまでは。

そんな変な転生をして元の記憶や人格が残っているかは非常に怪しいところですが、とにかくサムは元の鞘に収まろうと家族の元へ。しかし妻レイチェルはとっくに新しい恋人ジョーと新生活を築いていた。今さら帰ってくんなよっていう。でもレイチェルはサムにもまだ未練があってほっとけず二股みたいな感じに。ジョーは当然サムを排除したい。という醜悪な人間ドラマが展開されます。美しすぎるお手伝いさんの存在感がやけに大きいのも気になる。あんな人を同居させていいのか？　とにかく好感を持てる人物は見事に一人もいない。

幼い息子トニーは父親サムの帰還を素直に喜んだものの、サムがペットのヘビのタマゴをこっそりしゃぶっているところを目撃してしまい慌てて逃走。

「あれは本当のパパじゃないんだ…」

からの、

トニー少年の孤独な戦いが始まる！

…みたいなＳＦジュブナイル的ホラーなのかと思ったんですよ。

しかしその見通しは甘すぎた。パパの変化を柔軟に受け入れ、パパの口から変なものを注入されたトニーは極悪な超能力少年へとエボリューション。手持ちのオモチャに謎パワーを注入し、殺人マシンに改造。その殺人オモチャ軍団で気に入らないババアやお手伝いさんやその恋人を襲いまくるのだ！あとなぜか黒豹も襲ってくる。

エイリアンの影響で悪くなったのか、元々クソガキだったのかどっちなんでしょうかね。そんな感じでどこへどう転がっていくのか全く予想がつかないストーリーテリングに脳が追いつきません。というか作ってる方もただ好きな事をやりたい放題やってるだけで整合性なぞ最初からかなぐり捨てているものと考えられます。

その代わり特殊メイクにはめちゃくちゃ金とか愛とか気合が入っており、殺人オモチャやエイリアンやグロ描写のクオリティは恐ろしく高い。全体は著しく支離滅裂なのに細部は異常に凝っている、この歪さがたまらない。よくもまあこんなわけのわからん脚本にそれだけのリソースを投入したもんだなあと感動さえしてしまう。これぞ珍作映画鑑賞の醍醐味ですね。これが好事家にウケないはずもなく、続編が２つも作られたようです。いつかはそれもアマプラで観られるようになるといいですね。

ところで、トニーの飼っていた可愛いヘビがうっかり逃げ出してバアさんの夕食に混入してしまったせいで無残な死を遂げてしまうシーンは実に心が痛みました。その流れでジョーのペットであるインコが登場してきた時は、まさかこいつも酷い目に遭わされるのでは…と勝手にハラハラしてましたが、特に累が及ぶこともなくて良かったです。……じゃあ一体何のために出てきたんだ？と思ったら、フンの処理をするために鳥カゴに敷いていた新聞紙に重要な情報が出てた！っていうね。あまりにも回りくどすぎる役回りに笑ってしまいました。