「TUBE チューブ 死の脱出」 感想 ゲーム的であり人生のようでもある

概要

原題:Meandre/Meander

製作:2020年フランス

発売:アットエンタテイメント

監督:マチュー・テュリ

出演:ガイア・ワイス/ペーテル・フランツェーン/ロマーヌ・リベール


幼くして亡くなった娘に会いたいが、だからといって自殺することもできずに苦しんでいたリサ。彼女が道路に寝そべっていた時、通りすがりの連続殺人犯に捕まってしまう。そして目覚めた時、謎の暗く狭いダクトのようなところに拉致されていた。しかもそこは死のトラップだらけで怪物もうろつく危険な施設だった。


予告編

感想




邦題とジャケ絵から「キューブ」のパチモン臭を醸し出しているフランス映画。中身の方も設定は似てるっちゃ似てる。しかし質感は全然チューブっぽくはなくてダクトみたいな金属製の細い通路が舞台のソリッドシチュエーション系スリラー。



主人公リサはそんなわけのわからん施設にいきなり拉致され、道中に仕掛けられたトラップを避けながら過酷な環境をひたすらほふく前進していく。仕掛け人は一体何者なのか。SFっぽくエイリアンの存在を匂わせているようではあります。が、そういうことよりも、幼い娘に死なれた喪失感を抱えながら「どんなに苦しくとも少しずつでも前に進まなければならない」という人生の艱難辛苦をチューブ内での理不尽で不条理な出来事で表現しているのかなと思いました。よくある安易な見世物的ソリッドシチュエーションスリラーとは違い、人生を描こうという堅いマジメさを感じます。私としてはもっとふざけている方が好きですが、本作には笑いどころは一切ありません。



「キューブ」とは違ってリサには同行者はおらず、トラップもやけにシンプルなものばかり。そのせいか、雰囲気が昔の理不尽なテレビゲームのようです。制限時間内に用意された避難所に入らなければ焼かれるとか、強酸性の液体を避けながら進んだりとか、わけわからん怪物が追ってくるとか。キズを回復してくれる謎のグロテスクな味方キャラも出てきてなおさらゲーム的な感じが強まる。怪物やトラップ自体には大した物珍しさはありませんが、とにかく狭苦しいので思うように動けず常に息詰まるような閉塞感を覚えます。ソリッドシチュエーション系の中でも「あんな目に遭いたくない」度ではかなり上位に来る作品かなと。「人生」そのものがチューブと同じぐらい理不尽でツライのだと言われれば、まあそれもそうなのですが。




以下ネタバレあり



どんなに辛い目に遭っても、諦めて自死せずに力尽きるまで進み抜けば、最後には救いが訪れる。死んだ娘のいる別世界、天国のようなところへ逝き、幸せになれるのだ。という宗教的なメッセージを感じました。作中ではエイリアンの仕業のように見えたけど、まあエイリアン=神ですかね。私は空飛ぶスパモン教信者なのでそういうメッセージはあまり響きませんが、死後に天国へ逝けるならそれに越したことはないですね。


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