「熊の皮」 感想 芸術的クマパニック

概要

原題:La pelle dell'orso

製作:2016年イタリア

配信:Jolefilm

監督:Marco Segato

出演:Mirko Artuso, Sergio Bonometti, Silvio Comis


1950年代、イタリアのドロミテの小さな村で野生の熊による家畜襲撃事件が発生する。村でダメ人間扱いされているピエトロは賞金を得るために単身で熊狩りへと赴き、14歳の息子ドメニコも彼を追って山へ入るのだった。


予告編

感想





アマプラで配信されたイタリアのクマ映画。

邦題がインパクトありまくりだし、アマプラの説明文を見るとアニマルパニックのようなニオイもしたので一応鑑賞して観ましたが、これはもう完全に欧州文芸映画の趣き。主人公の親子は揃って寡黙、セリフはとても少なく役者が目で語るタイプの非常に淡々としたヒューマンドラマであり、だいぶ上級者向けの雰囲気がします。



とはいえアニマルパニック要素が全くないわけではなく、ストーリーの骨子は「ジョーズ」的でもある。村の人々を困らせるクマを狩るために山へ入った親子のドラマ。最初は息子ドミニコに冷たく粗暴に当たっていたピエトロが徐々に変化していく様などは良い感じというか私ごときがこういう類のきめ細かい感情の機微を描いた人間ドラマを語ることなどほぼ不可能のため単に「良い感じ」としか言えないのですが、まあそんな感じです。雑な感想で申し訳ございません。



クマ映画としては家畜を襲撃するシーン、山小屋に泊まっていたらクマが周囲を徘徊するシーン、クライマックスでの対決など、実物のクマを使っているのもあってアニマルパニックマニアが求めるものは一応揃っています。私の住む街では近年クマの出没事案が多発しており、リアルなクマの恐怖を仮想体験しておきたいのです。とにかく実物とは裏腹にめっきり数を減らして絶滅寸前の貴重なクマ映画ですから、大筋はヒューマンドラマであっても本作を見逃すべきではないでしょう。



さらにそれ以外の美点として、景色が大変壮観です。欧州映画ではよくオーストリア映画で描かれるアルプス山脈の景観に感動することが多いのですが、本作はそれらの頂点に立つと言ってもいいほどのインパクトがあります。ピエトロとドメニコがクマを狩るために山歩きをしているのをボンヤリ眺めて美しすぎる景色に感心しているだけでも心が洗われる思いです。映画としてもこの景観と人間ドラマ、クマが調和していて引き立て合っている、そんな風にも感じられます。



たまにはこういう抒情的な映画を観てデストイレだの豚の惑星だので汚れた精神をデトックスするのも悪くはないなと思いました。

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