「ムーンフォール」 感想 月が落ちてくる

概要

原題:MOONFALL

製作:2022年アメリカ

配信:アマゾンプライムビデオ

監督:ローランド・エメリッヒ

出演:ハル・ベリー/パトリック・ウィルソン/ジョン・ブラッドリー/マイケル・ペーニャ/チャーリー・プラマー/ケリー・ユー/ドナルド・サザーランド


ある時突然、月が軌道から外れ、地球へと激突しようとしていた。その猶予、わずか三週間。元宇宙飛行士のブライアンは地球を救うため、月がエイリアンの巨大建造物であると主張する陰謀論者KCハウスマンを連れ、NASAの重役であるジョーと共に3人で月へと向かうが…


予告編

感想





ローランド・エメリッヒ監督最新作は、製作費1億4千万ドルの超大作SFディザスターパニック。

…しかし驚くべきことに日本での劇場公開は見送られ、アマプラ配信スルーというまさかの事態。日本全国のエメリッヒファンが血涙を流すことになりました。

いやー何が悲しくてあのローランド・エメリッヒ監督作を家の小さな画面で鑑賞しなくてはならないんですかね。たぶん配給会社の人が「これはコケる!」と確信したからこの処遇なんでしょうけども…。実際1億ドルくらい赤字になってるみたいだし。



それはそうと、「月が地球に衝突する」という荒唐無稽な内容は嫌でもコレを思い出させます。





↑ご存じ「アルマゲドン」のパチモンシリーズ初期作品である「アルマゲドン2007」です。

ローランド・エメリッヒ監督の代表作といえば「インデペンデンス・デイ」「デイ・アフター・トゥモロー」ですが、これらは未だ毎年のようにパチモンがリリースされています。それを知ってか知らずか、エメリッヒ自身がパチモンをパクり返すような今回の所業は正直それだけでも面白い。まあアルマゲドンとエメリッヒには何の関係もないんですが。




…で、本編の内容ですが、これが実にくだらない。

エメリッヒが月を落とす時点でそりゃあくだらないのは百も承知ですが、それにしてもやっぱりくだらなすぎるというか非常に陳腐です。大昔の三文SF小説を読んでいるかのような味わい。人間ドラマもエメリッヒの過去作と何も変わっておらずいつも通り。これじゃ劇場公開を見送られてもむしろ当然かなという気がしてしまいます。



ただ、地表破壊シーンや月でのアレコレのスペクタクルな映像美はやっぱり無駄に凄い。家の小さな画面で鑑賞せねばならないのが非常にもったいないぐらいの超絶ハイクオリティです。ストーリーがくそつまらなくてもこの映像だけでも観る価値は充分あると言えます。無理とはいえやっぱりこれは劇場の大画面で観たかった。というか、こんなしょうもない内容の脚本にどうしてここまで巨額の資金を注ぎ込めるのか実に不思議です。まあ大半はチャイナマネーのようで、ことあるごとに「中国のおかげで~」「中国が~してくれた」だ何だと「インデペンデンス・デイ リサージェンス」の時と同じように露骨な中国アゲが引っかかります。カネを払ってアメリカ人にほめさせて何がそんなにうれしいのかね。あと、トヨタも出資しているのかレクサスの宣伝もされてましたね。「ハイスピード・モードだ!」なんてシーンもあったけどレクサスにそんな機能あるんか…



月の内部にエイリアンか何かがおる…という話なので、いい具合に地球破壊描写を盛り上げながら主人公たちはそこへ侵入するわけですが、そうとう絶望的な状況のわりには全く何も毛ほども緊張感がありません。本来もっとシリアスな雰囲気を出すべきシーンでも気楽に軽いジョークを飛ばしてくるせいです。そのノリがエメリッヒなんだと言われれば何も言い返せませんが、どうももったいない気がしてならない。



何やかんや言いつつも2時間10分の長丁場をさほど退屈せずに楽しめたので、「インデペンデンス・デイ リサージェンス」のような巨大な糞に比べれば全然面白い映画ではありました。とはいえ、「2012」よりはだいぶ落ちるし、赤字額から考えても大して需要も無さそうだしでこの手の脳筋大破壊ディザスター映画はもう限界なのかなとも思ってしまいました。


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