概要
原題:NOPE
製作:2022年アメリカ
配給:東宝東和
監督:ジョーダン・ピール
出演:ダニエル・カルーヤ/キキ・パーマー/スティーヴン・ユァン/マイケル・ウィンコット/ブランドン・ペレア
OJと妹エムが経営する牧場の上空に、謎の巨大な円盤が現れる。OJたちは円盤を撮影し、一儲けしようと企むが…
予告編
感想
ジョーダン・ピール監督最新作をIMAXで鑑賞してきました。
彼の作品にしては分かりやすいエンタメ!みたいな評判をツイッターで目にして期待して行ったのですが、意外とそうでもなかった印象。いや、確かに荒唐無稽でとんでもなくバカなことをやっていて面白いです。ただ、社会風刺的なメッセージ性も強く感じるし、荒唐無稽も行き過ぎであまりに突飛なネタなので、クライマックスは「面白い!!」という興奮を感じるよりも「は?何だと??」と戸惑ってる時間の方がやや長かったっていう。これだったら「ゲット・アウト」の方がよっぽどついていきやすい話だったかなと(「アス」は未見)
内容は、牧場の上空に現れた謎の巨大円盤を撮影して一儲けしようとした人々が何やかんやえらい目に遭うというもの。
ネタバレ全くなしで感想書くのはちょっときついんで、以下ネタバレ込みで書きます。
まだ未見の人はここに限らずネタバレを読まない方がよろしいかと思います。
以下ネタバレあり
ハリウッド映画に出演させられる馬と、テレビ番組に出演した揚げ句凄惨な事件を起こしたチンパンジー。馬はともかくチンパンジーと言えばブルーノやトラビスを思い出すんですが、被害者の描写を見るに本作はトラビスの事件をモチーフにしている模様。130分という潤沢な尺を使って「動物を安易な気持ちで見世物にすると痛い目に遭うぞ」的なメッセージを伝えてくる前半~中盤。
それがあの空飛ぶ巨大円盤と一体何の関係があるんだろうなあ…円盤周りはなんかシャマランの「サイン」みたいな映画だなあ…と思いながらボンヤリ画面を眺めているうちに、実はあの空飛ぶ巨大円盤も馬やチンパンジーと同じようなもんだったという衝撃的すぎる展開に唖然。空飛ぶ円盤と言ったらエイリアンの宇宙船に決まってんだろ!という全人類の思い込みを全力で逆手に取ってきやがりました。豪快というか盲点というか、よくもまあそんなことを思いつくもんだなと。これは脱帽するしかない。
リアリティとか色々ガン無視でツッコミどころ満載の空飛ぶ円盤ショーですが、観客がモリモリ吸い込まれていく絵面と悲鳴、降り注ぐ血の豪雨によって圧倒されごまかされてしまいます。こういうアイデアを思い付いたとしても、なかなかここまでの大金と手間暇をかけて映画化しようなんて普通考えないんじゃないですかね。冷静に考えると頭おかしいよ。そういう意味でもあの円盤の正体と、馬・チンパンジーとの結び付け方は完全に意識の外から一撃食らった気分でした。
実際はもっとずっと深~い意味とかあちこちに相当込められているんだろうなとは思うんですけどね。意味深な描写だらけで映画偏差値の低い私にはちょっと追いきれない。チンパンジーの事件で靴が立ってた意味は私には分かりませんでしたし。
コメント
直立してた靴ですが、あれに注意が向いて子供ジュープがチンパンジーと偶然に目を合わさなかったおかげで生き残ったのかと。それが成功体験になった大人ジュープが円盤を飼い慣らそうとするも今回は目を合わせて……という展開なのかと。
私の疑問への解釈コメントありがとうございます。ということは、あの靴が立ってたのはそういう作劇的な理由であって、物理現象としては単なる偶然であったというわけなんですかねえ。やけに意味ありげに映すもんだからもっと何かあるのかと思ってしまいましたが、それもミスリードの一つだったんでしょうか。
あれだけ過度に強調したのは、ジュープはチンパンとグータッチしかけて「自分が特別」だと感じたのとは裏腹に、「(助かったのは)別の理由」で、靴が直立するくらいの「まぐれ」だと観客に明示する意図があったとかですかね……?
円盤が物体を操っている描写もあったんで靴もそれに関係あるのかな?とも思ったんですが、終わってみるとやはり関係ないっぽいしそんな風に考えていいのかもしれませんね。
ジュープが「チンパンでセーフだったんだから円盤もいけるだろ!」という境地に至ってしまったのは正にあの靴が全ての元凶なわけで、そう考えると印象的に演出されて当然という気がしてきました。
普段家で見るB級映画なら気に留めることもないのに「何かあるかも……」と考えさせられてしまう時点で制作者の術中にはまってしまった感はあります。
そうですね、たまたまあの近辺にいて靴やチンパンに影響したってこともなさそうですね。意味のない見てくれに気を取られてたら、全然別のところに本質が…という本作の構図を暗に示していただけかもしれません。ゲットアウトといい本当に大胆なミスリードを仕掛けてくる監督だなあと思いますよ。