「地下室のヘンな穴」 感想 下ネタ二国同盟

概要

原題:Incroyable mais vrai

製作:2022年フランス

配給:ロングライド

監督:カンタン・デュピュー

出演:アラン・シャバ/レア・ドリュッケール/ブノワ・マジメル/アナイス・ドゥムースティエ


アランとマリーが越してきた新居の地下には奇妙な穴があった。そこに入ると、12時間後の2階へワープするのと同時に、3日分若返る効果があるのだ。若さに執着するマリーは憑りつかれたように穴へ出入りするようになるが…


予告編

感想





「ラバー」

「ディアスキン」



のカンタン・デュピュー監督最新作がまさかの全国ロードショーということで、喜び勇んで劇場へ行ってきました。


今回は「そこに入ると12時間進んで、3日若返る」という謎の穴に直面した夫婦を描いたブラックなコメディっぽい作品となっております。



フランスで大ヒットして日本でも全国ロードショーになるだけあって、カンタン・デュピュー監督とは思えないほどマトモで常識的な内容。前作であれほどまでに唯一無二のぶっとんだ狂気を診せてくれた超奇才デュピュー監督ともあろう者が一体どうした風の吹きまわしでしょうか?



若さに執着しすぎてしまった男女がひどい目に遭う、という話でごく古典的でありふれた教訓的なメッセージまで読み取れてしまうし、いかにもフランス人が好みそうなしょうもない下ネタに走りまくってオフビートなノリで笑いを取ろうとする様子は本当にフツー。「ディアスキン」の時のような強烈に惹きつけられるオーラは失われています。



とはいえ、常識的になった分カドがとれて「普通に笑えて楽しめる」雰囲気の作品になっていることは確かであり、カンタン・デュピュー監督を知らない人がたまたま劇場で観たとしてもそこまでイカレたサイコ監督だとは気づかないかもしれません。めちゃくちゃかわいいネコも出てくるし、意外と万人に勧められる作品のような気もします。あくまで気がするだけですが。



あと、みんな思うことでしょうが、そもそも「12時間進んで3日戻る」っていう設定があまりにも微妙すぎるんですよね。たった1年若返るために百数十回も潜るだなんてめんどくさすぎるでしょう。




以下ネタバレあり




そんな微妙な穴の話よりも、エレクトリック・ティムティムに執着する男ジェラールの話の方が明らかにキャッチーで面白いんですよ。これは珍作っていうよりチン作ですね。ということでこの映画の笑いはほぼ下ネタで構成されています。本当にくそしょうもない下ネタをまるで文芸映画のように淡々としたノリで見せてくるのがいかにもおフランス的です。バカです。しかも、


「下ネタといえば、日本だよな!」


とばかりに馴れ馴れしく肩に手をまわしてくるかのように怪しい日本を舞台に怪しい日本人を出してくるから困る。フランス人は一体どういう目で日本を見ているのか。君たちと一緒にしないでくれたまえ。日本はフランスと違ってそんないかがわしい国じゃないんだ。


…と、文句は言いたいものの、そんなジャポニスム要素のおかげで日本人にとってはより楽しめる作品になっているかなとも思いました。


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