「SMILE スマイル」 感想 笑みとは本来攻撃的なもの

概要

原題:Smile

製作:2022年アメリカ

配給:パラマウント

監督:パーカー・フィン

出演:ソシー・ベーコン/カイル・ガルナー/ケイトリン・ステイシー/ジェシー・T・アッシャー/ロブ・モーガン/カル・ペン


精神科医のローズは、やってきた患者が笑顔のまま凄惨な自殺を遂げる光景を目の当たりにする。その後、ローズの周囲で不審な出来事が頻発し、不気味な笑顔の人物に悩まされることになる。


予告編

感想





低予算ながら本国では大ヒットしたホラー映画。

製作費1700万ドルで興行収入2億1740万ドルも稼いだとか。

しかし日本ではなぜか配信スルー…これは劇場でやってほしかった。

主演の女性がどこかで見たことある顔だなあと思ったらケビン・ベーコンの娘と知って驚きました。言われてみれば親父にそっくり…!



内容的には「リング」+「イット・フォローズ」といった感じで、ストーリーには意外と目新しさはありません。しかし「笑顔」をフィーチャーした怖がらせ方とジャンプスケアの使い方がこれまでにない新鮮なインパクトを生み出していると感じました。



「笑うという行為は本来攻撃的なものであり 獣が牙をむく行為が原点である」(「シグルイ」より)という言葉もある通り、笑顔というのは人によってはこのうえなく恐ろしく映るものです。例えばマックなどただでさえドナルドが怖いのにスマイル0円などという狂気のキャンペーンをやられてはまず近寄る気が起きません。私はバーガーを食べたい時は大抵モスに行っています。



などという冗談はさておき、精神科医ローズが診ることになった若い女性が、牙を剥き出すかのような獰猛な笑顔で必要以上にエグイ自殺を遂げるオープニングには心を奪われます。掴みはバッチリです。そんなものを目の前で見てしまったローズは呪いか幻覚か分からない不快な怪奇現象に悩まされることに。そしてその場には必ずあの笑顔を浮かべている人物がいるのだった。



ローズは自分にしか見えていない笑顔付き怪奇現象を安易に訴えまくることで周囲にキ〇ガイ扱いされ孤立していきます。これ自体はかなり古典的な流れなものの、個人的にはどうも苦手でけっこうストレスがたまります。ローズは精神科医のくせにもうちょっとうまく立ち回れないものか。



しかしそんな定番のストーリー展開の中に突如としてぶち込まれる異色のジャンプスケアは観客を脅かすために練りに練られた感があり、タイミングはある程度推測できてもなお予想以上のショックを与えられます。不気味な劇伴も良いし、音響にも気を使ってるだろうからこれが映画館で体験できていればなあ。ただ、後でSNSや予告編を見るとけっこうあちこちでショックシーンをネタバラしされているので観るならなるべく予備知識は入れずに観た方が良いかと思います。



そんな感じで前半~中盤の緊張感・恐怖度は相当なものなんですが、満を持してクライマックスで姿を現すアイツは正直あまり好きなタイプの怪異ではありませんでした。アイツのせいでなんだか急に凡庸になってしまった感が否めない。あくまで相手は人間の笑顔で圧迫してくる存在であってほしかったかなと。とはいえ、それを差し引いても充分楽しめる素晴らしいホラー映画でした。


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