概要
原題:Barbaque
製作:2021年フランス
配給:ブラウニー
監督:ファブリス・エブエ
出演:ファブリス・エブエ/マリーナ・フォイス/ジャン=フランソワ・キエレイ
長年肉屋を営んでいる夫婦のヴァンサンとソフィー。ただでさえ経営難に陥っているのに、過激派ヴィーガンの襲撃にあい店を荒らされてしまう。ヴァンサンはうっかり犯人の一人を殺害してしまい、死体の処分に困ってハムに加工する羽目に。勘違いしたソフィーがそれを店頭に並べると、予想外に大人気商品となってしまう。
予告編
感想
経営難の肉屋がうっかり人肉を売り出したところ、思わぬ大人気商品に…というフランスのブラックコメディ。
本作の場合単なる人肉ではなく草食だからこそ美味い「ヴィーガンの肉」であることがウリですが、そこを除けばわりとよくある話ではあります。最近だと「ミートショップ・オブ・ザ・キラーズ」なんてのも似たような設定の映画でした。
しかし本作は段違いに面白い!! カンタン・デュピュー監督作もそうですがフランス製のブラックコメディは刺さる時は思いっきり刺さりますね。キ〇ガイをおもしろおかしく描写するのがうまいというか。本作の場合どっちかというと主人公の肉屋夫妻よりも、「Vパワー!Vパワー!」と叫びながら肉屋を襲うヴィーガンたちの方がよっぽどアレに見えましたが。
現実ではあまりお近づきになりたくない過激派ヴィーガンですが、フィクションで眺める分には大変面白いです。例えばヴァンサンたちの娘がよりによってヴィーガンの彼氏を連れてくるのですが、肉は当然食べないにしてもワインまでもを完全拒否。ヴィーガンワインでなければ飲めないとおっしゃる。もともとワインにはブドウしか入ってないのでは?と思ったら、なんと製造工程でいろんな虫が混入してすり潰されているとか。それはヴィーガンじゃなくてもちょっとキモイですね。あんまり考えたくなかったかも。しかし彼はそれを
「いわばシャトー・アウシュヴィッツですよ」
とまで表現。なんというVパワーワードか。しかし小虫の命まで気にしてたら相当生きづらいと思うんですけどね。おちおち歩けないし高速道路なんて絶対使えませんよ(まあ実際のヴィーガンワインは虫を気にしてるのではなく卵白やゼラチン不使用とのことですが)。
これには他のモブヴィーガンも黙っておらず、貝の気持ちを代弁する男まで現れます。
「カキにレモン汁を?
自分の目に垂らしてカキの気持ちを考えろ!」
これまたなんとVパワーに満ち満ちたセリフか。私は生ガキ食べる時はポン酢派なんだけど許されますかね? どっちみちレモン果汁入ってるだろうからダメか。聞くところによると生ガキはタバスコでもけっこういけるそうですが、そっちなら…いや、目にレモンよりタバスコの方がツライか。そういやカキに目はないと思うんですが、レモン汁を垂らすとどこにしみてるんですかね。
肉屋のヴァンサンも世界で一番うまい牛肉こと神戸牛を意識し、ストレスなくヴィーガンを仕留めて世界一うまい「神戸ヴィーガン」を作ることを宣言。前述のサイコヴィーガン共のVパワーワードをも上回るインパクトに大笑い。そこからのチーターやワニが獲物を襲うドキュメンタリー映像に重ねてヴァンサンがヴィーガンを襲撃する演出はもう面白すぎて笑わずにいることなど到底不可能でしょう。オチだけはやや唐突に見えたものの、全体的にはくそ面白いのでカニバリズムに抵抗のない非ヴィーガンの方はぜひご覧になってみてはいかがかと思います。
「ヴィーガンズ・ハム」(Amazon Prime Video)
コメント
遅ればせなにこの映画を観ました。
とても面白かったです。
言われている通り、主人公よりも、
ヴィーガンや金の話しかしない友人夫妻の方がおかしく見えるように撮ってますね。
当然、主人公側に感情移入してしまうので、
それがこの手の映画の醍醐味の一つではあるのですが、
いつ犯行がばれるか、いつ捕まるかというハラハラが精神衛生上よくなかったですが。
ちょっと主人公は、自分の家の「家畜」に添加物を使わない事に固執する、
「地獄のモーテル」の主人公を彷彿させますね。
この映画も、結構面白いので(未見であれば)お勧めです。
「地獄のモーテル」は好きな作品でDVDも持っていますよ。
そっちの方はベーコンにされる側が普通の人々だったので猟奇的な恐怖もそれなりに感じられましたが、
ヴィーガンズハムの方はむしろハムになる側の人間の方がアレなのでただただ笑えて面白いだけでしたね。
個人的には捕まるかもというハラハラ感もなかったです笑