概要
原題:Veneciafrenia
製作:2021年スペイン
配給:クロックワークス
監督:アレックス・デ・ラ・イグレシア
結婚間近のイサベルは友人たちと共にスペインからベネチアを訪れる。到着早々、押し寄せる観光客に対する憎悪を剥き出しにした地元民のデモに遭遇。さらに、水上タクシーで乗り合わせた怪しい道化師ともトラブルになってしまう。それでも彼らは気を取り直し、その夜は思う存分羽目を外すのだった。だが翌日、仲間の一人が失踪。あの道化師は観光客を狙う殺人鬼だったのだ…
予告編
感想
ベネチアに観光客はこれ以上いらねーんだよ!来たら殺すぞ!!
という実に珍しいメッセージが込められたジャーロ風社会派殺戮映画。
公式サイトの監督の言葉によると観光地のキャパシティを超える観光客が押し寄せてしまうことで起こる様々な弊害「オーバーツーリズム」について知ってもらいたいのだそうです。
私は本作をGW中に観に行きましたが、上映館のサツゲキへ向かう途中は相当な人混みをかき分けて歩く羽目になりました。日本最大のガッカリ観光スポットと名高い時計台にも人が群がっています。別に大して面白いわけでもないただの貧相な地方都市・札幌の市街地ですらGW中はこれだけの観光客がやってくるとなると、ベネチアはさぞかし恐ろしい大混雑が日常茶飯事になっているのでしょう。つまらない街に住んでて良かった。
ちなみに劇場に一歩入るとうってかわって全然人がおらず、私の他にはたったの2人しかいませんでした。これはこれで異様な雰囲気です。外には避けきれないほどの人が大量にいたのに…。
しかしいくらベネチアがオーバーツーリズムに苦しめられていると言っても、何の罪もないただの観光客を通り魔的にザクザク殺していくとは随分過激な内容だなあ、そこまでベネチアの人々は観光客を嫌っているのかなあ…と思ってたら、本作の製作・監督・脚本はスペイン人でした。勝手に他国の心情を代弁してもいいんだろうか。
製作がスペインとはいえイタリアで殺人が起きる映画なんだからということでジャーロ風味の不穏さが演出されており、オープニングクレジットなどは実にイケてます。殺人鬼映画として観ても、なかなかリアルな首チョンパがあったり、壁に飾られた仮面を眺めてるだけでいきなり串刺しにされたりとか理不尽かつえぐい殺人シーンを楽しめます。
ベネチアの美しい街並みの中、過剰に着飾った殺人鬼が芝居がかった手法でやらかすもんだから、目撃者はみんなそれが小芝居だと勘違いしてしまうっていうのはとことんまで観光客をバカにしている感があってなかなかアレですね。主人公グループもマナー悪いし食い逃げまでするしであまり肩入れしたくはならない感じ。そういや本作は2021年製作ですが、コロナ禍にあってもベネチアには観光客が構わず押し寄せていたんですかね。
ラストだけは「え?それだけ??」と言いたくなる肩透かし感がありましたが、全体的には色々と目新しく充分楽しめる作品でした。
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