概要
原題:Trump Unauthorized
製作:2005年アメリカ
配信:トランスワールドアソシエイツ
監督:ジョン・デヴィッド・コールズ
出演:ジャスティン・ルイス/キャサリン・ウィニック/ソウル・ルビネック
若き日のドナルド・トランプは、父親が「今は不況だからやめろ」と反対するのを押し切ってマンハッタンでのコンベンションセンター開発計画に着手する。自分ひとりではなかなかうまくいかない中、ドナルドは有能な弁護士ピーターと出会い、彼の協力で豪華なホテルやトランプタワー、カジノを次々と建設していく。巨万の富を得た彼が目指すものとは…
予告編
感想
今月配信のアマプラ謎映画の中に紛れていたドナルド・トランプの伝記映画。
ドキュメンタリーではなく、脚色ありのドラマ仕立てになっています。
2005年製作なのでトランプが大統領になるかなり前の作品ですね。
私は2019年に米国株投資を始めるまでは世界経済、アメリカ経済、政界になどまるで興味を持っておらず、トランプについても「バック・トゥ・ザ・フューチャーのビフのモデル」だという程度しか知りませんでした。つまりとにかくめちゃくちゃイヤな奴という先入観があり、実際にしゃべっているところを見ても「なんか色々エグそうな人だな…」と思うばかりでした。
それはみんな同じだったらしく、トランプが当選した途端に金融市場が大混乱に陥り「トランプショック」なる現象まで発生。しかし就任後は逆に株価は上がり出し、今度は「トランプラリー」と言われるほど最高値を更新することに。私もその波に便乗していたらいきなりコロナショックに見舞われて大変な思いもしましたが。
てな具合に色々あってその頃はトランプの言動を日々チェックしていたものの、バイデンに負けてからはもうすっかり過去の人で彼の姿を見ることもなくなりました。ただバイデンは高齢すぎて認知症疑惑もあり、来年の大統領選ではトランプの返り咲きも多少はあり得るのかなと。そういう情勢を見越してTWAさんはこの作品を買い付けて来たのではないかと考えられます。
それで内容の方ですが、トランプが父親の不動産事業を引き継ぐところから始まり、マンハッタンに豪勢なビルやホテル、トランプタワーを建設していくビジネス模様の合間にイヴァナとの結婚や兄貴とのアレコレを織り交ぜつつ、女性問題絡みで没落しかけてからの復活までが相当なハイテンポで描かれております。
とにかくスピード感がすごい。特にイヴァナとの結婚のあたりですね。パーティで出会って挨拶したと思ったら次のシーンでは既に結婚式を挙げており、「これから30年間、トランプは1年あたり2~9万ドルをイヴァナに支払う」という奇妙な契約を結んだりしています。大富豪のやることはワケが分かりませんな。そして次のシーンでは既に子供が生まれている。伝記ドラマというよりダイジェストを見ている気分ではあります。
トランプの兄貴の死もこういう伝記ドラマならそれなりにウェットな見せ場になるのかなと思ってたんですが、めちゃくちゃあっさりスピーディに流されてしまいます。「俺は不動産の神に捧げられたいけにえだ」という台詞はインパクトがあるものの描写が薄くて響きにくい。相棒の弁護士の死の方がまだ扱い大きかったような。何にせよ全体的に抑揚があまりないのでやっぱりダイジェスト感は強いです。
それにしてもこういうのを見ていると金持ちの親から生まれた子供はうらやましいなあとねたましく思ったりするわけですが、トランプ本人はそれが死ぬほどお嫌のようで
「金持ちの家に望んで生まれてきたわけじゃない」
「全て自分の力で作ったんだ!」
とか何とか言っております。
じゃあ親の会社とかカネとか使うなよ…と正直突っ込みたい。が、トランプは莫大な資産を築きながらもなお貪欲に上を目指し続けており、金銭欲より名誉欲の方が上回っているんだなあとは思います。私なら1億円も手に入ればすぐに隠遁して井之頭五郎とか本郷播みたいな感じのひっそり気ままな暮らしをしたいと思ってしまいますのでね…
そんなトランプの金銭観が強く現れた台詞が印象深い。
「カネなどに意味は無い
現金でも通貨でも
カネは信頼のシステムだ
俺は重要人物なんだ
俺は有力者だ
誰の夫でも相棒でもない
俺はアメリカの貴族だ」
カネは資本主義社会においては信頼を得るための手段でしかない。トランプにとって大事なのは、アメリカという国において重要人物であること。
この作品は非公認ドラマらしいのであまり真に受けていいかどうか微妙ですが、なんとなくトランプについてほんの少しくらいは理解が深まったような気がしました。仮に彼が大統領に返り咲いたとしても、株を狼狽売りしたりせず少しくらいは信頼して見守ろうかなと思います。
「ドナルド・トランプの野望 大統領になる男の非公認ドラマ」(Amazon Prime Video)
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