概要
原題:Sous la Seine
製作:2024年フランス
配信:ネットフリックス
監督:ザヴィエ・ジャン
出演:ベレニス・ベジョ/ナシム・リエス/レア・レヴィアン/アンヌ・マリヴィン/森本渚
トライアスロンの国際大会を控えたパリのセーヌ川に巨大なサメが出現。科学者のソフィアは、若い環境保護活動家からそのサメがかつて海で仲間を皆殺しにした因縁のアオザメ”リリス”だと知らされる。ソフィアは海上警察のアディルと共に惨事を防ごうとするが、市長はまるで聞く耳を持たず…
予告編
感想
ネットフリックス独占配信のフランス産河川系サメ映画。
これのためだけにわざわざネトフリ再加入しましたよ。
とはいえ前情報ほとんど仕入れてなくて全然期待も何もしていなかったんですが、これがビックリ仰天の脳天直撃大傑作でした。サメ映画としては歴代でも五本の指に入るレベル。数年に1本出るか出ないかの超A級サメ映画と言えます。
それにしても、なんでこれを大々的に劇場公開してくれなかったんでしょうか。劇場で観てたら泣いて悦ぶクオリティですよこれは。パッと見でも相当お金がかかっているのに、実にもったいない。しかもネトフリ配信てことはソフト化もしないんでしょうかね?
内容は、気候変動やら環境の変化で突然変異した巨大なアオザメがセーヌ川に棲み付き、それを察知した科学者ソフィアと警察が何とかしようと奔走するというもの。
舞台が河川なのは別に珍しくも何ともないし、そこで開かれるトライアスロン大会を中止しろと提言しても聞く耳を持たない市長などかなり古典的。というか「ジョーズ」後に大量生産されたアニマルパニック映画群とほとんど同じ流れ。ついこの前も「シャーク・ド・フランス」なんてのがあったし。まあそんなバッタモン業界ですらも既に時代遅れであまり使われなくなったパターンと言えます。
しかし、今となっては市長側の気持ちも分かるのがちょっと複雑ですね。バカっぽい振る舞いはともかく「17億ユーロもかけたのよ!?」って確かにそりゃあサメぐらいで中止できるわけがない。多少の人命の危機よりも17億ユーロのプロジェクトを完遂する方が大事。私が市長でも多分もみ消します。薄汚れた大人になってしまったものです。どうでもいいけど現実でもパリ五輪を前にセーヌ川の水質の悪さで色々揉めているようですね。
本作はそんな陳腐なパターンに過激な環境保護活動家という現代的スパイスを絡め、あくまでシリアスにやり切ろうとします。「人間よりもサメが大事なの!!」と無茶苦茶な行動に走りまくり、その誠意がサメに通じると信じている活動家。その姿にはシーチワワなどのエコテロリスト的な狂気が漂う。今だとこういう人たち本当にたくさんいるんだろうなあ。
そんな連中がフランスの地下墓地という薄暗くおぞましいロケーションでモリモリパクパク喰われまくるパニックシーンの物量と絶望感が凄まじい。まさかサメ映画でこんな本格的な人喰いパニックホラー映像を拝める日が来るとは!? ここは本気で度肝を抜かれました。
サメ映画なんて人が喰われて当たり前だろ?
別に珍しくもない場面だろ??
とぬるいシロウトは考えてしまいがちですが、全然そんなことはないんです。
もう一度言うが全然そんなことはない。
むしろ激レアです。
これほど大規模で景気よく群衆がサメに喰われまくり、人体がちぎれ飛ぶ激熱パニックシーンなど滅多なことではお目に懸かれません。ジョーズにも、ディープブルーにも、ロストバケーションにも、海底47mにも、ない。MEGは一応やろうとしてなくもないものの、あれは軽いノリで丸呑みしていくだけだったので実質ノーカウント。
しかも本作、それは中盤の見せ場に過ぎず真のクライマックスではさらに途方もないスーパーパニック大惨事を披露してくれるからたまらない。展開自体は別に意外でもないから少し書きますと、トライアスロン国際大会が強行開催されてしまい、そこに巨大サメが乱入…!という誰もが夢見たシチュエーションをストレートに描いてくれる。
普段激安クソサメ映画を観ている身からすると、目もくらむようなリッチすぎる画面に思わず昇天しそうになりました。サメ映画でこんなにカタルシスを感じることもそうない。こんな映画が観たかった。素晴らしいの一言です。オチはそれまでのシリアスさはどこへやらのトンデモに走っており、アサイラムのアレに続きそうなぶっとびエンディングではありますが、それもまたよし。おそらくは2020年代最高のサメ映画となるであろう傑作でした。
コメント