概要
原題:The Good Nurse
製作:2022年アメリカ
配信:ネットフリックス
監督:トビアス・リンホルム
出演:ジェシカ・チャステイン/エディ・レッドメイン/ンナムディ・アサマア/キム・ディケンズ/マリク・ヨバ
幼い娘2人を抱えるシングルマザーのエイミー。彼女は心筋症を抱えながら看護師としてICUの激務をこなしていたが、保険に入れず有効な治療を受けられずにいた。このままではそのうち倒れてしまう。そんな折、新しく入ってきた男性看護師のチャーリーと親密になり、彼の助けで生活に希望を持てるようになっていく。だが、チャーリーがやってきてからその病院では患者の不審死が相次いで発生していた…
予告編
感想
6/6にネトフリに再加入したものの「セーヌ川の水面の下に」以外全然何も観ていなかったので、今日はチュパカブラ(@momonga0951)さんにオススメいただいた本作を鑑賞してみました。
何か聞いたことのあるタイトルだな~、セクシーな看護師が患者を惨殺しまくるバイオレンス映画だったかな?…と思ったら全然違いました。実際にあった殺人事件を題材にした極めてシリアスな内容であり、2時間3分もの間ずっと不穏な空気に包まれており、特に後半は張り詰めた緊張感が途切れることがない。映像的に派手なことは一切起きないし、劇中で起こる殺人も2件だけと非常に地味。それなのに鑑賞者を心胆寒からしめる演出、演技はまさに一流の仕事。
ちなみに後で調べてみたら私が想像してた方の作品は「マッド・ナース」でした。実に紛らわしいなあ。
看護師が患者の点滴に致死量の薬物を混入させ殺害する、という事件は今まで何度か耳にしたことがあるので、そこまで珍しいケースでもないとは思います。が、本作に登場するヘルスケア・シリアルキラーのチャールズ・カレンは推定400名もの患者を殺害したということで連続殺人鬼史上最悪と言えるほどの存在なんだとか。寡聞にして知りませんでした。
しかし、それにしてはチャールズの恐ろしさを強調するような演出がほとんどない。せいぜいダイナーでテーブルをドン!と叩いたシーンでビクッとしたくらいで、あとは主人公エイミーにとっての愛すべき同僚だった優しい顔の方が印象に残る。優しい人に裏の顔があるのはそりゃ怖いけども、そこまで裏を見せてもくれない。現実と同じく動機は謎のまま、「どうしてあんな優しい人が…」で終わってしまう。ホラーファン的に冷酷非道な大量殺人鬼の恐怖とスリル!でエキサイトさせてくれるような作品では全くない。
史上最悪のヘルスケア・シリアルキラーそのものよりも、もっとずっと恐ろしいものがある。それは、そんな犯行を止めることができない、止める気すらない無責任な病院のずさんなシステムなのだ。
…と、そちらの方を強く糾弾しているように感じられます。ヤバイ看護師を雇ってしまったが、責任を負いたくないのでどの病院も黙ってリリース。それを9回も繰り返した結果としての400人殺害。病院の社会的意義とは一体何であるのか。利益ばかり追求していていいのか。
確かにアメリカの病院にはかかりたくない。エイミーが心筋症でよその医者にかかるシーン、診察だけで980ドルもの請求。当然無保険であり、保険に入り有給を取るためには今の職場で1年勤続する必要がある。日本は日本で医療が手厚すぎて社会保険料が上がりまくって国民の生活を圧迫していますが、アメリカの「全部自己責任でね」も怖すぎる。その中間くらいにならないものか。いつになく真面目な文章になってしまいましたが、今日はそんな風に思いました。
(※本作とは何の関係もありません)
コメント