概要
原題:Deadstream
製作:2022年アメリカ・イギリス
配給:S・D・P
監督:バネッサ・ウィンター/ジョゼフ・ウィンター
出演:ジョゼフ・ウィンター/メラニー・ストーン/ジェイソン・K・ウィクソム/パット・バーネット
炎上系配信者のショーンは森の奥深くに佇む心霊スポットへたったひとりで乗り込むことに。そこは何人もの住人を死に追いやった、曰く付きの朽ちた屋敷だった。あちこちにカメラを仕掛け、そこで一晩を過ごす…という彼にとって初めてのホラー企画。だが、ショーンがコメントに煽られて色々やらかした結果、屋敷に潜む怪異を呼び起こしてしまいとんでもない目に遭う。
予告編
感想
炎上系(迷惑系?)の動画配信者がオバケ屋敷に乗り込むという、一見手垢まみれのファウンドフッテージ。サツゲキで鑑賞して参りました。
設定自体は本当に腐るほどある形式で、正直ゴミのような作品が多いこのジャンル。そんな中でも本作はトップクラスに愉快な作品でした。これは掃き溜めに鶴と言っても過言ではないクオリティ。
「迷惑系配信者 VS 悪霊」のパターンとしては「ダッシュカム」なんて変わり種もありましたが、あれも面白いと言えば面白いけど画面揺れがキツすぎて私はあんまり楽しめなかったんですよね。三半規管弱いんでPOVとか苦手なんですよ。
が、本作は定点カメラをあちこちに仕掛け、さらに主観カメラと自撮りカメラを適時切り替えることにより比較的画面酔いがしにくく見やすい構成になっていました。ファウンドフッテージものは主観カメラがわざとらしく揺れてるだけになりがちでイヤなんですが、本作は視点に非常に気を使い手間をかけてあり、安っぽさもなくありがたかったです。
これでこそアホみたいな迷惑系動画配信者がバカ騒ぎしている様を心置きなく味わえるというもの。ショーンは炎上系迷惑系とは言うものの、本作中では人里離れた廃墟でたった独りで配信しているだけ。誰にも迷惑をかけていない。ひとりで勝手にビビリ散らかしまくっている単なる愛すべきアホに見えます。まあ廃墟に潜む怪異に迷惑をかけに来たとも言えますが。
廃墟の方にも「何か出そうな禍々しい雰囲気」が満ち満ちていて実に良い舞台です。まだ怪異が姿を現す前の段階では、ショーンがいくらアホ全開な言動を連発していてもなお中和しきれない不気味さがあります。グループならともかく、独りであんな怖い死の館に乗り込めるショーンの肝っ玉は実は物凄いのではないか。
しかも車を降りてはわざわざスパークプラグを森に投げ捨て、死の館に入っては南京錠をかけてカギを排水溝?に捨てるというアホを超越した行動に開いた口が塞がらない。退路を断つってレベルじゃねえぞ! 一夜明けた後どうやって帰るんだよ…。と思ったけど何だかんだ探し出せるあたり、配信者なりにハッタリを効かせただけなのか。
ショーンの振る舞いを無視すればホラー的演出もかなりイケており、怪異が本性を現し始めたあたりは結構真面目に怖い。まあ観客以上にショーンがデカい声で大騒ぎして怖がりまくってくれるのですぐに笑いに転化されてしまうんですが。これをシリアスに撮らない製作者の心意気に乾杯。ショーンはすごい勢いでビビリ散らかすくせに要所要所で急に図太く調子に乗るのでその落差もまた笑いを誘います。
どんな問題でも何でもダクトテープで解決していくアメリカンなダクトテープ愛も面白いし、ポテトキャノンなるふざけたアイテムで怪異と戦う様には吹き出さざるを得ない。視聴者の期待に応えて面白い事しなきゃ!というショーンの誠意のようなものさえ感じてしまう。怪異が迫る危機的状況でも呑気に視聴者のアドバイス動画を見てしまうショーン。これほど「どうか生き残って欲しい!」と願いたくなるクズもそうそういないと言えるでしょう。
とはいえ、ここまでならまだ一山いくらの「そこそこ笑えるPOVホラー」で終わるところです。が、本作のクライマックスではこのジャンルを前人未到の領域まで深掘りし…なんとアレにカメラを取り付けてしまうという空前絶後の珍ギミックを披露してくれます。さすがに「何に」付けるかはネタバレできませんが、これは本当に驚きました。ファウンド・フッテージに限らず、今までそんなアホの極みのようなことをやらかしたホラー映画は未だかつてなかったのではないか。
なんかもう怪異の方もショーンというコンテンツを楽しむモードに入っているのではないか?と思えてくるほど斬新なクライマックスからのオチに私も大満足。ぜひ、続編は本作のラストシーンの直後から開始するということで、よろしくお願い致します。
本作はまだ劇場公開中につき、とりあえずこれでも貼っときます。
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