「モンキーマン」 感想 どん底で燃える弱者の怒り

概要

原題:Monkey Man

製作:2024年アメリカ

配給:パルコ

監督:デブ・パテル

出演:デブ・パテル/シャールト・コプリー/ピトバッシュ/ヴィピン・シャルマ


地下格闘技で負け役の覆面選手”モンキーマン”。

彼は幼い頃に母親を悪徳警察署長に殺され、その復讐を遂げるために生きてきた。


予告編

感想



インド系イギリス人が撮ったアメリカ映画だけど舞台はインドで実際の撮影は大体インドネシアで行われたというちょっとややこしいアクション映画。



昨年末にオープンしたTOHOシネマズすすきのへ初めて行って鑑賞してきました。

新しいだけあってシートが他の映画館より圧倒的に快適で素晴らしい。

今度プレミアムシートも使ってみよう…



内容は、インド社会の底辺を這いまわる負け役格闘家が、権力者によって理不尽に殺された母の復讐をするというストレートなリベンジ物。が、その一見シンプルな骨子にインドの階級社会批判、腐敗政治批判、マイノリティ迫害への訴えなど様々な重たい社会的テーマでこれでもかと肉付けされており、そこに神話と宗教も絡めてくる盛り沢山ぶり。その結果尺が2時間超えという実に重厚な作品になっていました。



予備知識はほぼナシで観に行ったので、このタイトルでこんなにマジメ一辺倒な映画だとは予想外。「タフって言葉はモン・キーマンのためにある」みたいなノリで感想書こうかなと思ってたけど、とてもそんなふざけたことが許される雰囲気ではないんだ。仕方ないんだ。



インドの社会情勢は正直ほとんど分からないので、本作で描かれるそれらのメッセージを正確に理解するのは恥ずかしながらちょっと無理でした。主人公モンキーマンの生き様はインドの猿神ハヌマーンになぞらえているようですが、そんなの真・女神転生でしか見たことないし。



まあでも今のインドに宗教右派だの悪徳警察だの差別主義だのといった社会問題があり、ああいうマイノリティ(ヒジュラ)が存在し迫害されている…ということをこの映画によって知ることができたのなら、それでもいいのかなとは思います。



本作のいい所は、そういった社会問題を訴えるための映画でありつつもエンタメアクションとして私のようなボンクラが観たいモノもしっかり見せてくれることです。何も考えずに観ていても充分エキサイティングな出来。映画は見世物として楽しめてこそ初めてメッセージが伝わるものだと思っているので。世の中にはそこをなおざりにしてしまう社会派映画が多い気がするし。



監督・脚本・主演のデブ・パテルはその名前とは裏腹にすごく細くて手足が長いので格闘アクションが映えます。が、モンキーマンは無敵の超人ではないので苦戦しまくり。底辺をのたうち回るような泥臭く息苦しい格闘戦が多く、作品に充満する悲壮な雰囲気も相まって爽快感はほとんどありません。クライマックスの雑魚を蹴散らすあたりが若干気持ちいいぐらいかな。



しかしそれは魅せる格闘ではなく噛み付きなどえげつないことも躊躇なくやらかす全力の殺し合いを表現しているわけであり、見応えは充分です。ナイフをドスドス刺す戦闘などはそこはかとなく「ザ・レイド」っぽさも感じられて好ましい。たまに全然関係ない人間と殺し合う羽目になったり、インドのカオスな雰囲気ともマッチしている感。



気になったのはモンキーマンが復讐の足掛かりとして仲間にした(踏み台にしただけ?)のアルフォンソという男が使い捨てられてその後何のフォローもなかったことですかね。彼もオート3輪に乗っていたので底辺から這い上がろうとしていたクチだと思うんですが、ちょっとかわいそすぎると思う。あんな扱いをされてモンキーマンを恨まないのも変だし。というかあの後助けてあげないと警察に拷問されて殺されるしかない気がする…





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