「デンティスト」 感想 歯医者ホラーの決定版

概要

原題:The Dentist

製作:1996年アメリカ

配信:U-NEXT

監督:ブライアン・ユズナ

出演:コービン・バーンセン/リンダ・ホフマン/マイケル・スタッドヴェック/パティ・トイ


歯科医のアランは美しい妻と共に豪華な家で優雅な生活を送っていた。だが、彼は極度の潔癖症でもあった。結婚記念日の朝、アランは妻が清掃員と浮気している現場を目撃してしまう。「俺が綺麗にしてやったその口に汚いものを入れやがって…!」。潔癖歯科医の激しい怒りが妻と間男に、そして無関係な患者たちに爆発する。


予告編


感想



ブライアン・ユズナ監督の歯医者ホラー。

歯医者ホラーの決定版!っていうかこれと続編の「キラー・デンティスト」しかないんですけどね。



昔、何かの本で知ってぜひ見たいなと思ったもののDVD化されておらず、実家のビデオデッキもすでに処分した後だったので完全に諦めていた作品。まさか今ごろになってU-NEXTで配信されるとは驚きでした。そして喜び勇んで再生してみたらオープニングクレジットにアンソニー・C・フェランテの名前が出ていて二度驚愕。サメ台風でブレイクする前にこういうところで下積みしていたんだなあ…



内容は、妻の浮気をきっかけにブチ切れた潔癖症の歯科医アランが、妻に復讐するだけでは飽き足らず患者たちの口内をメタクソに破壊していくという途方もなく恐ろしいお話。



チュイ~~~ン、ガリガリガリガリガリ…


「せ、先生!? 削り過ぎじゃないですか!?」


「ええいうるさい!邪魔するな!おまえはクビだ!!」



あんな凶暴な騒音を発するドリルを、治療ではなく殺傷に使ってしまったら一体どうなるのか。

誰もが歯科医に身を預けるたびに湧き出る妄想を具現化してしまった本作。

子供には絶対に見せられない作品です。




しかし今まであまり考えたことがなかったんですが、歯医者っていうのも相当に難儀な職業ですね。行きたくて行く人はいないし、決して人に好かれることがない。患者は地獄のような苦痛を味わわされ、もう二度と来たくない!と思いながらも小分けにして何度も執拗に通わされる。



アランがブチ切れた直接のきっかけは妻の浮気だけど、そこに至るまでのストレスの積み重ねが彼の叫びに現れています。



「熱心に学び、働いても尊敬されない

皆、歯を清潔に保たない!」


歯の着色汚れ

歯槽膿漏などの歯周病

ひどい口臭

全部 治すのは我々だ

患者が不潔にした口をきれいにする仕事

なのに 嫌われる」



まあこれはアランが患者によからぬ所業を致そうとしてしくじり、ぶん殴られた直後の叫びなので単なる逆ギレにしかなってないんですが、言ってることには何となく同情できます。



もともとアランは患者が苦しまないようかなり気を使っていたように見えるんですよね。治療室をハワイアン風に飾り付けたり、また別の部屋ではイタリアのオペラハウス風にしてみたり、笑気ガスを積極的に使用していたり。苦痛から気をそらそうと努力している。それなのに、どうして…!という歯医者の悲哀も感じられないことはない。もっと真面目にやればシリアスな社会派スリラーにも仕立てられたんじゃないでしょうか。



が、そこはブライアン・ユズナなのであくまで悪趣味な見世物ホラーに。普段全然見る機会のない他人の歯科治療をアップでじっくり、しかもただの治療ではなくおぞましい治療ミスから悪意満点の拷問まで様々なグロ映像を拝ませてもらえます。子供の患者にもやらかすからスゴイ。ただの麻酔注射でもウッと来るのに、歯をやたらめったら削りまくるとか、舌にドリルとかマジでキツイ。これほど食欲を失わせる映画も滅多にないですよ。



そんな最凶サイコ歯医者も、患者に「1日3回ハミガキするから!もうお菓子も食べないから!!」と懇願されるとつい見逃してしまう。カワイイですね。想像した以上に尖った珍品で20年越しの好奇心を満たしてくれました。続編もいつか配信されるといいな。





「デンティスト」(Amazon Blu-ray)

↑今月発売のブルーレイ。

アマゾンの紹介文もおもしろい。


「一般的な映画評論の世界では一切相手にされなかったが、(中略) 裏の世界では圧倒的な支持を集める」


だそうです。



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