「アンデッド・ウォーカー」 感想 差別と偏見とゾンビ

概要

原題:Dead Don't Die in Dallas

製作:2017年アメリカ

配信:トランスワールドアソシエイツ

監督:イズラエル・ルナ

出演:リチャード・カーテン/クリスタル・サマーズ/エンジェル・マルティネス/ディロン・バインヤード/ケニー・オチョア


エイズやインフルエンザなどあらゆるウイルス性疾患を防ぐことができる画期的な新薬が発売。ゲイコミュニティの人々は歓喜し、差別主義者たちはそれに反発する騒ぎが起きていた。その翌朝、テキサスのある田舎町では薬を飲んだ人々がゾンビと化し…


本編

感想



itn distribution の グラインドハウス風ゾンビ映画。

アマプラ299円。



夢のような新薬を飲んだ人々がなぜかまとめてゾンビ化…という導入ですが、本作はそんなことよりゲイやトランスジェンダーの人々が差別主義者の偏見に立ち向かう的な内容になっています。



テキサスの田舎町で突如発生したゾンビ軍団に追われ、どっかの建物に立てこもるLGBTの人々と差別主義者の神父。差別云々よりもまず生き延びることを優先すべき状況です。が、神父はそんなことよりその場に居合わせたLGBTを口撃することにばかりエネルギーを費やす。さらに、あろうことか自分の息子もゲイでその場に恋人もいると判明してしまう。神父の偏見丸出しヘイトスピーチの嵐が吹き荒れることに。ゾンビはどうでもいいのか?



その生存者グループでは多数派のLGBTも当然神父に反発して揉めるわけで。前半はみっちりそんな感じ。こいつらゾンビに囲まれてる状況でいつまでそんなことでウダウダやっとんじゃとゲンナリしてきます。んなことわざわざゾンビ映画でやらんでもいいだろよと言わざるを得ません。



腐れ神父「ゲイはエイズになる。常識だよ、聖書にもある」



めんどくさいからゾンビより先にこの腐れ神父に鉛弾をぶち込めばいいんじゃないかな…



しかもこの神父の奥さんが他の男と浮気しており、ゾンビそっちのけでサカりはじめたりする。籠城さえしてれば翌朝には全て解決してるよねくらいのノリなの? かつてここまでゾンビをなおざりにしたゾンビ映画があっただろうか。



…まあ、あったかもしれん。ゾンビ映画って大抵ゾンビ以外の何かが主題になっているもので、ゾンビ自体はテキトーに扱われがちですからね。もっとゾンビに真摯なゾンビ映画が観たい。それにしてもこのテーマとゾンビは食い合わせが悪いというかまるで噛み合っていない感。




ただ、後半はよけいな口論が控えめになってゾンビ軍団とのグロ全開ながらどこかポンコツな激闘が描かれ、それなりに楽しめるようになります。特にトランスジェンダーのボクサーがかつて自分をバカにした大男のゾンビと拳で戦うあたりは良いです。



今日も続く差別と偏見を訴えたい映画だとしても、ゾンビ映画というジャンルを選んだ以上それをセリフでグダグダ言わせるのではなく、最初からこんな風に展開と映像で語って欲しかった。今日はそんな風に思いました。




「アンデッド・ウォーカー」(Amazon Prime Video)



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