「エイリアン:ロムルス」 感想 ストライクゾーンど真ん中の豪速球

概要

原題:Alien: Romulus

製作:2024年アメリカ

配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン

監督:フェデ・アルバレス

出演:ケイリー・スピーニー/デヴィッド・ジョンソン/アーチー・ルノー/イザベラ・メルセード/スパイク・ファーン/アイリーン・ウー


劣悪な環境の植民地で働くレインは、仲間と共に放棄された宇宙ステーションから別の遠い惑星へと逃げ出す計画に参加する。彼らはそこから研究用宇宙施設ロムルスにたどり着くが、冷凍休眠用の燃料が足りず、船内を探し回ることに。だが、そこには宇宙最強の完全生物ゼノモーフが潜んでいた。


予告編

感想



「エイリアン」1作目と2作目の間を描く正統続編。

公開初日の夜にスクリーンXで鑑賞して参りました。

初日なので具体的なネタバレはなるべく避けて書きます。



私は余計な前情報を入れたくないのでSNSで”試写”をミュートワードに設定してましたが、それでも事前の期待が膨らみまくっていた本作。レーティングがPG12っていうのとディズニーが絡んでるのが大きな不安要素ではありましたが、何より原点回帰っぽい雰囲気が漂っていたのが良いんですよ。



なんせ初代と2作目は途方もない神懸かり的傑作ながら、3作目以降は微妙に「そういうのが観たいんじゃないんだよなあ…」感が漂うシリーズになっていったので。「プロメテウス」「コヴェナント」はなんだかますます私の望む方向性からズレていってましたしね。どれもつまらないわけではないんだけども。



フィンチャーもジュネもリドスコも作家性が強すぎて単なる焼き直しはやりたくないからこそそうなっていったんだと思ってますが、こちらとしては変にひねるより純粋にゼノモーフ(エイリアン)の恐怖を追及した続編を欲していたわけですよ。「1」と「2」でやり尽くしたと言えばそうかもしれんけど、何十年も経ってるんだし何かやりようがあるだろうと。



あと「3」はまだしも「4」までいくとリプリーが特殊な存在になりすぎて正直邪魔に感じていたので、もうリプリーとは関係ない「エイリアン」が観たいと当時は思っていました。



そんな人間からすると、本作は完璧すぎるほど理想的な続編でした。いやそれを超えてくる勢いさえある。30年来の渇きと飢えがようやく満たされたと言っても過言ではありません。あと、私は閉鎖空間で化け物やテロリストとの戦いを強いられるタイプの映画が大好物なんですが、そういうの今世紀になってからほとんど作られなくなりましたからね。逃げ場とか安全地帯があると何か物足りなく感じるんですよ。その点、本作は理想的エイリアン欲と閉鎖空間欲を同時に満たしてくれる。なんという素晴らしい映画なのか。



で、内容の方ですが、劣悪な環境の植民地で苦しい労働を強いられている若者たち(+アンドロイド1体)が放棄された宇宙ステーションから遠い星に逃げようとしたら、そこにはエイリアンが…!という話。



主役の若者グループがエイリアンのことなど何も知らない、何のオーラもないただの一般人というのが良い。元々が悲惨な境遇なので、そんな人たちがさらにひどい目にあってしまうのは気の毒すぎる気もするけど、より絶望感が際立って良い。奴隷から抜け出そうとあがく若者をAI(アンドロイド)が導いたり惑わしたり寄り添ったりするところが現代的なテーマになっていると感じられます。



本作ほど絶望的な危機を畳みかけてくる映画もなかなかない。「どうやったら助かるんだコレ?」という状況の連続。序盤の対フェイスハガー戦から緊張感抜群なだけでなく、「ドント・ブリーズ」の監督らしいアイデアでフェイスハガーの恐怖をこれでもかと際立たせてきます。あいつら素早いし、やられたら一番イヤな死に方になるわである意味成体より厄介なんじゃないか。



PG12のためかチェストバスターのグロ表現はかなり控えめながら、誕生したエイリアンの見せ方は神秘的でカッコイイ。成体エイリアンは「2」から銃さえあればサクサク倒せる雑魚になっちゃったのが残念に思ってたんですが、宇宙船内では強酸性血液が船体に穴を開けてしまうから銃を使えず、単体でも1作目のような貫禄が復活しております。これはプレデターも勝てない。



銃は使えないと言いつつ、しかし武器無しで切り抜けられるわけがないので使うだろうと思っていたら、銃を使うために全く想像もしていなかった状況を創り出してきました。あれだけシリーズを重ねた「エイリアン」にまだこんなアイデアを加える余地があったとは驚きです。他のどんな映画でも観たことのない斬新なクライマックスに私も大興奮に次ぐ大興奮で昇天しそうでした。2時間がこんなにも早く感じ、まだ終わって欲しくないとさえ思った映画は久しぶりです。



本作は過去作のネタをまんべんなく散りばめながらも新機軸の見せ方やアクションが多数盛り込まれており、余計なひねりもない。懐古趣味でありながら革新的でもあり、そのバランスが素晴らしい。正直、神格化された「1」「2」に限りなく近づいた2020年代最高の傑作と言わざるを得ない。これは2度3度とリピート鑑賞してこようかな。偉大なるフェデ・アルバレス監督には「プレデター」もこんな感じで復活させて頂きたいなと思いました。





「エイリアン」(Amazon Prime Video)

↑「1」と「2」だったら私は僅差で「1」派ですね。



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