「サイレント・スクリームズ」 感想 クリスマスに死のプレゼント交換会を

概要

原題:All the Creatures Were Stirring

製作:2018年アメリカ

配信:トランスワールドアソシエイツ

監督:デイヴィッド・イアン・マッケンドリー/レベッカ・マッケンドリー

出演:コンスタンス・ウー/ジョナサン・カイト/ジョスリン・ドナヒュー/アシュリー・クレメンツ/マーク・ケリー


クリスマスイブの夜、一緒に過ごす人がいないマックスは同じ境遇の女友達を誘い、奇妙な舞台を観覧することに。

最初の演目「靴下は吊るされた」は、会社のクリスマスパーティで行われたプレゼント交換から始まる殺戮の宴。箱を開けた社員がトラップで殺され、締め切った部屋にガスが流入してくる。そんな中、ひとり一つずつ殺人プレゼントの開封を要求されるのだ。


予告編

感想



12月、そしてクリスマス。


私の勤め先は超繁忙期という名の悪夢を迎えるため、ここ20年ほどは心穏やかに過ごせた試しがありません。12月後半ほど転職意欲が盛り上がる季節もない。でも忙しくて何もできない。家族や恋人と一緒に欠片も信じてないであろうキリストの生誕を祝う人々を妬むどころではなく、むしろひとりでゴロゴロしている人の方がうらやましくてたまらない状況です。



なので私はクリスマス近辺になると私より酷い目に遭っている人間を見て楽しみたくなるわけです。その点、本作はTWA提供のアマプラ謎映画にしてはかなり充実した「クリスマスに酷い目に遭っている人を観られるホラー」でとても良かった。



オムニバス形式で5本の短編が入っており、うしろ2つはともかく前半の3つは非常に楽しめる出来。核戦争後のように荒み切っている私の心に少しばかりの潤いがもたらされたと言えます。




一つ目の短編は、会社で強制参加のクリスマスパーティというただでさえ地獄のようなイベントが、突如死のプレゼント開封デスゲームと化す話。アメリカでも会社でそんなしょうもないイベントが強制されたりするもんなんですね。うちも昔は繁忙期なのに職場で毎晩鍋パーティみたいなことをやっていて非常につらかった記憶がありますが、ああいうのって上の人は良かれと思ってやってるんですよね。そんな職場で育つのは殺意だけだというのに。この短編はプレゼントを開封したらデストラップで死ぬか、あるいは不穏な物が出てきて殺し合いに発展するというもので実に清々しい気分になれるいい話でした。




二つ目は深夜のスーパーの駐車場でキーの閉じ込みをやらかしてしまった男性が、他の車に助けを求めたら悪魔に憑かれてるやばい奴らが乗っていたという話。一つ目に比べれば地味ですが、それなりに厭な雰囲気が出ていて悪くない。クリスマスとはうっかりすると知らん人にいきなりやっかい事を押し付けられて人生台無しになったりする恐ろしい夜なのだ…という現実が悪魔というオカルト現象を通して表現されています。多分。




三つめはクリスマス嫌いの孤独な男の元に悪霊が現れ、「クリスマスは祝うもんだぞ」と男の精神を汚染してくる話。


クリスマスに独り寂しく自宅でテレビを眺める男…というと一見悲惨な境遇のように見えますが、先に書いた通り家でゴロゴロできるだけで羨ましさしかない。何をひねくれる必要があるのか。明らかに勝ち組である。そんな彼と悪霊との鏡を通した対話が印象的。



悪霊「独りぼっちのクリスマスか?」


男「だからなんだ」


悪霊「いや いいことだ」


男「だよな」


悪霊「くだらない飾りもウザい友人も…

息が詰まる家族もいない!」


男「俺たちは勝ち組だ」




私も勝ち組になりたい…

クリスマスイヴの夜にやることがなくて悪霊に諭されるようなヒマ人勝ち組に…!






ちなみに4本目の短編は車でトナカイに当て逃げしてしまったおじさんがトナカイのゾンビか何かに襲われる話でした。草食系アニマルパニック味があって良いことは良いのですが、いかんせん肝心のトナカイが足とかツノとか一部しか映らないのでさすがに物足りなさ過ぎた。そこは頑張って一瞬でもいいから全身像を見せてくれないと、いくらマニアでも楽しみにくい。5本目もわりとどうでも良くてあまり印象に残らなかったものの、1~3本目だけでも充分299円の元が取れて楽しめる良い作品でした。





「サイレント・スクリームズ」(Amazon Prime Video)



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