「エルダリー/覚醒」 感想 熱波で輝く全裸異常高齢男性

概要

原題:Viejos

製作:2022年スペイン

配給:エクストリーム/BBB

監督:ラウル・セレッソ/フェルナンド・ゴンサレス・ゴメス

出演:ソリオン・エギレオル/グスタボ・サルメロン/パウラ・ガジェゴ/アイリーン・アヌラ


その夏のマドリードは記録的な酷暑に見舞われていた。そんなある日、マヌエルの妻ロサが自宅マンションで投身自殺してしまう。精神的ショックで様子がおかしくなったマヌエルを、息子マリオは妻の反対を押し切り引き取って同居することに。だが、マヌエルの挙動は日々悪化する一方で、ついには家族を皆殺しにすると宣言する。


予告編

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感想



昨年、気になってはいたものの劇場で観そびれたスペイン製猛暑老人ホラー。

あまりにも暑すぎてなぜか老人たちが覚醒し、全裸で襲い掛かってくるホラー映画など面白くないわけがない。



とはいえ、序盤からクライマックスまでの長い間はかなりテンションが低くて陰鬱です。認知症っぽくて挙動が怪しいおじいちゃんを引き取った家族間のギスギスが普通にリアルで厭な感じ。息子と孫娘は血の繋がりがあるだけにおじいちゃんを見捨てることができず、多少の苦労があってもいいじゃないと強引に同居を決めるが、折り合いの悪い奥さんが猛烈に反発。でも、ご飯を作ったりお風呂に入れたりと介護は奥さんがやらされる。昔からよくある話ですが、40℃超えの熱波の中で義父の介護なぞこの世のケツの穴という他ない。



こういうのを観てると、無事に子や孫を作った老人ですらそんなに疎まれてしまうのに、自分の老後は一体どうなってしまうんだ…とか多少心配にならないこともない。介護してくれる人など全くいないし、仮にいてもされたくない。全自動介護ロボの実用化と普及が望まれます。昔は長生きするつもりなんて全くなかったけど、人間という生き物はいつまでも「死ぬのはまだ今日じゃなくていい」と思い続けているうちにいつの間にか高齢者になっているものです。



日本でも世代間対立は結構起きてますからね。老人をお荷物扱いするのも若いうちはいいけど、誰だって死ななければいずれは老人になることを認識できていないように思えます。老人叩きに勤しんで実際に老人の扱いが悪くなるころには自分自身が老人になっているという喜劇が目に見えている。そして最初に貧乏くじを引くのは例によって踏んだり蹴ったりの氷河期世代でしょう。



なので、本作も安易に世代間対立を煽るような内容だったら嫌だなと多少心配してたんですが、どうもおじいちゃんの様子がおかしくなっているのは認知症ではなく何かSF的な要因が働いている模様。まあそりゃ単なる猛暑であれば、老人など覚醒して暴れるどころかどんどん弱っていくだけですしね。その点超常現象なら仕方ない。



そんなわけで胸にわけのわからん装置を埋め込んで光らせ、無修正全裸になった高齢者軍団が襲い掛かってくるクライマックスは心置きなくテンションを上げて面白がることができました。いや、覚醒したとはいえ所詮ご老体なので動きが鈍くてあんまり怖い気はしないけれども絵面のパワーが凄まじく、それだけでも充分満足できます。オチは結構トンデモに見えますが、ノイズや胸の装置などを考えると結局アレしかないので特に驚きはありませんでした。




「エルダリー/覚醒」(Amazon Prime Video)



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