「涙に興奮する殺人鬼」 感想 デブはいつも正しいのよ

概要

原題:Tearsucker

製作:2023年アメリカ

配信:トランスワールドアソシエイツ(多分)

監督:スティーヴン・ヴァンダープール

出演:サム・ブリッタン/アリソン・ウォルター


恋人とひどい別れ方をして情緒不安定になったリリーは、ブイログに動画を投稿することで気を紛らわそうとしていた。だが、動画撮影中に号泣してしまい、それが逆にバズってしまう。一方、女性の涙に興奮を覚える異常サイコキラーのトムはその動画を観て大興奮。リリーへと近づいていく。


予告編

感想



今月から配信開始の新作謎映画。

リールワン的なテレビ映画かなと思ったけどそうではない模様。

U-NEXTで399円。



女性の涙に興奮してしまう難儀な性癖を持つトム君が女性を泣かせては涙をペロペロするという、かなり張りきった異常性を見せつけてくれるサイコスリラーでした。邦題がストレートすぎて笑ってしまう。



とはいえ、中身はかなりシリアスな雰囲気です。登場人物の少なさ、静かな会話シーンばかりの構成から相当な低予算であることがうかがえますが、女性の涙をペロペロしたいトム君の際立った異常性がしっかり不穏さと緊張感を醸し出しており、何とかお笑いに堕落するのを防いでいます。まあ、お笑いと紙一重なのは否定できませんが。



なんせ女性が涙を流すところを見てうまそうに舌なめずりするわ、涙を拭いたタオルを隠れて一心不乱にしゃぶるわとトム君の絵面がいちいちヤバイ。女性の痛み、悲しみを糧にするタイプの変態サイコ野郎だとしても、そこまでして物理的に涙を舐めたがるのは何なのか。滅多に観られない珍種の変態に珍作マニアの私も興奮せざるを得ない。



そんなトム君の毒牙にかかってしまうヒロインのリリーは、


「一日中パソコンでケツの穴を眺める人生」(本人談)


を送っており、前の恋人と別れてからはたったひとりの友人のサポートを受けながら孤独に生きている状況。ちょっと心の弱いところをつついてやればすぐ泣きそうな感じの弱々しい女性であり、トム君に目を付けられやすい人材であると言えます。というかこの表現いいですね。私も仕事でも趣味でも一日中パソコンでケツの穴(比喩)を眺めている気がします。



ただ、リリーの外見は田中真紀子あるいは24のクロエっぽい感じであり、配給会社にあんまりイケてないと思われたのかジャケ絵(サムネ)には別人が主役であるかのように使われていたりします。悲しいですね。



中盤、リリーがこう語る場面があります。


「友人のデブにこう言われたの

『吐き出した方がスッキリする』って…

デブはいつも正しいのよね」



「デブはいつも正しい」とかいう突然のパワーワード。まるでリリーが過食と肥満に悩んでおり、肥満体で拒食症の友人に嘔吐を勧められて納得しているかのようなセリフに見えて混乱してしまいました。まあ少し考えれば悩みを抱え込んでないで打ち明けてしまえば気持ちがスッキリするよ!という意味と分かるんですが、友人の名前が「デブ」というだけで一見全く違った意味になってしまうのだから翻訳は難しい。たま~にいるんですよね、デブっていう名前のアメリカ人。ちなみに綴りはDebです。



それはさておき、本性を隠したトム君と付き合い旅行へ行くことになったリリーがいかにしてトラウマから立ち直り、涙を求める変態サイコキラーを打倒するのか。そこのところは安いながらも見応えはあり、珍作的な意味でも真っ当な意味でもそこそこ楽しめるいい作品でした。







「1リットルの涙」(Amazon DVD)



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