「終わりの鳥」 感想 死神インコ・戦慄のくちばし

概要

原題:Tuesday

製作:2024年イギリス・アメリカ

配給:ハピネットファントム・スタジオ

監督:ダイナ・O・プスィッチ

出演:ジュリア・ルイス=ドレイファス/ローラ・ペティクルー/アリンゼ・ケニ


病に侵され、余命わずかな少女チューズデーの元に、死を司るインコの「デス」がやってくる。チューズデーはデスを小話で笑わせ、せめて母親の帰宅までと死を引き延ばした。だが、デスを受け入れられない母親はとんでもない行動に出る。


予告編

感想



先月シアターキノで予告編を観て非常に気になっていた作品。



「終わりの鳥」、それは難病余命ものとコンゴウインコを組み合わせた全く新しい格闘技…じゃなくてヒューマンドラマ。お涙頂戴余命ものは嫌いですが、本作はそういうあざとい演出を全然してこなかったので素直に感動できて良かったです。この手の話にしては宗教臭さがほとんどなかったのもありがたい。人間が考えているような「神」は存在しないと明言してくれます。



しかも、娘の死を受け入れられない母親が巨大コンゴウインコと物理的に激しくバトルする場面はアニマルパニック味もあり、ついでに牛のゾンビまで出てきます。なのでその手の変なアニマルパニック好き・鳥好きにとっては一粒で2度も3度もおいしく素晴らしい作品でした。



本作のコンゴウインコは死を与えにやってくるだけあって禍々しいというかそれなりにキモさも感じさせる造形ですが、基本的には結構リアルなインコ的振る舞いをするし、歌ったりタバコ吸ったりと愉快な性格で可愛いです。死ぬ前にあんなデカいインコに抱擁されるのなら怖くないどころかむしろウェルカムでしょう。死神をインコにするなんてえらい奇抜な発想だな~と思って観てましたが、ちゃんとインコとしての特色を活かしているのもすごくいい。そんな死神インコがめちゃくちゃ酷い目に遭う場面もあるものの、超常的存在だしどうせノーダメージだろと分かってたのでそんなに不快にはなりませんでした。




私事ですが、先月飼っていたセキセイインコが亡くなったんですよね。ちょうど10歳になったばかりでした。それまでずっと健康だったのに、正月明けから急に体調を崩し、病院に通って腹水を抜いたり、投薬したり。それでも良くなることはなく、足が麻痺して床を這いずる生活を2ヶ月半過ごした末のことでした。



そこまでいくともう飼育というか介護してる気分でしたね。床で暮らせるように環境を整え、朝晩に薬を飲ませて、尻もこまめに拭いてやらないといけないし。本人(鳥)もそれは嫌だったようでだいぶ噛み付かれましたが。



その時思ったのが、愛する者の死は受け入れがたく抵抗してしまいますが、苦しみから解放されるのなら死もそんなに悪くないんじゃないかということです。誰しも頭では考えるけど、実感することはそう多くはない。本作は、死を間近にした者にとっては死は安らぎであり救いでもあると優しく説いてくる。娘の死を受け入れた母親のラストシーンがこのうえなく感動的。



子供とペットを一緒にするわけではありませんが、これはペットロス中の私にもかなり効くテーマです。しかも本作はインコの方が死を与えにやってくるのでだいぶ妙な角度で私の心に刺さったような気がします。ペットロスの人によく言う「虹の橋」という詩がありまして、それを信じておけば自分の死に際には今まで見送った4羽のインコと会う幻覚を視られるだろうと思ってるんですが、ついでにこの死神インコも出て来てくれれば鳥まみれで死ねていいなあと。今日はそんな風に思いました。




コメント

切り裂きシンザ さんの投稿…
うちにも20歳になる老描がいるのであと何年一緒にいられるかと思うと今から心が重くなります・・幸い美魔女系なので若々しく元気ではありますが・・いまから覚悟はしないといけないなと思ってます。ただ、私自身が早死にの家系なので私の方が早いという可能性もなくはないw
岩石入道 さんの投稿…
>切り裂きシンザさん

20歳とは長生きしてますね。でも猫の寿命はどんどん延びてるそうなので今元気ならまだまだいけるかもしれませんよ。
自分が先に逝った方が気は楽ですが笑、世話をしてくれる人がいればねえ…